2021年7月23日金曜日

20210723【架空の話】・其の66 【モザイクのピースとなるもの】

医専大4年生の初夏、突然、文系院での指導教員からメールが届き「今週末、福岡にて学会があるため福岡に出向くのですが、都合が良ければ、福岡まで出て来ませんか?」とのことであった。幸いなことに、その日はバイトのシフトも入っておらず、K大での実験は一カ月ほど前に終わり、また、2年前にKに移り住んで以来、これまで、ほとんど遠出をしなかったことから、これを良い機会と、福岡まで出向くことにした。

交通手段としては高速バスが良いと思われ、当日は早朝にKを発ち、昼頃に福岡の博多に着いた。待ち合わせはJR博多駅西口付近と定めておいた。

正午少し前にバスは博多駅に着き、降りてから少し歩いて駅前広場に至り、周囲を見てみると、背の高いビルが立ち並び、また、全国展開の百貨店などもあり、その街並みの威容には少し驚かされた。2年あまりのKでの在住と、そこからあまり外に出なかったことから、街並みに対しての感覚が変化したことにここで気が付かされた。

指導教員は、いでたちに特徴があるというわけでもないが、日本人の中に外国人が存在すると分かり易いのと類似した感じにて、それなりの人込みの中でも比較的容易に判別できた。
この時はよくアイロンのきいた白の少し厚手生地の開襟シャツの下に、これまた白のクルーネックシャツを着て、紺のチノクロスパンツを穿いていた。

私がこの時の指導教員の服装を憶えていた理由は、それまでの私が知る指導教員は、夏になると決まってマドラスチェックの半袖のボタンダウンを着用しており、その記憶からの変化をそこに見つけたからである。

ともあれ、久しぶりの再会にて駅近くの喫茶店に入り、それぞれの近況を話したが、指導教員は現在、応募を検討している大学での公募があるとのことであり、私に意見を求めるのかよく分からないような話し振りにて話された。私の方は、昨年秋、K大学のS教授研究室での会話を話し、そこから「今後さらに進学するべきであろうか?」といったことを尋ねてみた。

すると指導教員は、少し黙ってから「それは親御さんとは相談しましたか?」と先ず訊ねてきた。さらに続けて学資や、修了後の進路についての展望などについても訊ねてこられた。

私はその点については、粗くではあるものの、一応考えてはいた。それは、また奨学金に頼りつつ、アルバイトをして、突然のそれなりの額の出費に関しては、実家に相談するといったものであったが、実のところ両親に対しては、そのことを明確には伝えていなかった。とはいえ、そもそも、このハナシ自体、私のもとに来たのは一カ月ほど前に終わったK大での実験から数日経ったある日、E先生からS教授の伝言として「K大の歯科理工学の院を受けてみないか?」との打診を受けて以来であり、これは当時の私としては、思案のしどころであったには違いない・・。

今回もまた、ここまで読んで頂き、どうもありがとうございます!
順天堂大学保健医療学部


日本赤十字看護大学 さいたま看護学部 



一般社団法人大学支援機構



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