2020年12月21日月曜日

20201221【架空の話】・其の56

こうして、その様子を傍から眺めてみると、彼等彼女等はいかにも若く、どうも高校生の様にも見えるのであった。

一般的に大学2年生は十九歳もしくは二十歳(はたち)であることから、参加メンバーには未成年も少なからずいたと云えるのだが、そのあたりは、最近はシッカリとしているらしく二十歳になっている者のみ、お酒を注文することを許されていた。とはいえ実際に「飲み方」が始まると多少ルーズになってしまうらしく、会の終わり頃になると、どうしたわけか二十歳に達していないと思しき学生達も、顔を赤くして上機嫌な様子になっていた(出来上がっていた。)。

こうした本来であれば禁じられた飲酒をしてしまうのは、概ね男子学生であり、女子学生の方は、少なくともこうした場所では、飲酒を伴わないような陽気さで盛り上がっていたように見受けられた。

私の在籍する口腔保健工学科は、一学年で私を入れて十八名であり、そのうち半分が女子学生であった。また、私以外の男子学生は現役か一浪であり、つまり、その中では私が突出した年長者であった。

とはいうものの、私には頼るべきツテなどなかったことから、以前にも述べたように学科内では何となく浮いてしまい、また、それを改善すべく私の方も「友達作り」を積極的に行わなかったためか、ここでは、最後まで友達らしい友達は出来ずに終わった。

飲み屋さんに入り、出席を確認し、飲み物を注文してしばらくすると、つきだしと、はじめの飲み物が運ばれて来た。それらが皆に行きわたると、さきほど私への対応を行ってくださった女子学生が立ち上がり「皆さん、小テストやレポートや実習などでお疲れとは思いますが、今日は今年度から新たに口腔保健工学科に編入された***さんにもご参加をしてもらい、全員参加にて、このような会を開くことが出来ました。今後も皆で力を合わせて頑張り、講義や実習をパスして行きましょう。」といった主旨の挨拶をされて乾杯となった。

会が始まると、しばらくは平和な感じでの飲食となったが、やがて、同期の男子学生の中でも割とヤンチャな感じの三人組がこちらに来て、私に話し掛け、ビールを注ぎ合ったりした。そこまでは何事もなく、まあ穏やかなやりとりであったが、どうしたわけか話題が私の服装のことになり、三人組のうちの一人が少し酔っている様子にて「***さんは、たしか東京から来たんだよね。・・入学した頃から見ていると、着ている服装の好みが結構俺と被っているから、前から話してみたかったんだ・。それで、そこに置いてある帽子なんてなかなか良いよね・・。ちょっと被らせてよ。」といった感じで訊ねてきたため、傍らのブーニーハットを渡すと、それを受け取り被って、他の二人に「これ、どう?」と云った感じに視線で訊ねていた。すると他の一人が突如、その帽子を頭から奪い取り、自分で被ってみて、そしてすぐに、それを座っている床に叩き付けた。その突然の動作に私は驚いたが、しかし同時に、彼らからは特に底意のある悪気のようなものは感じられなかった。もし、そうしたものがあったのだとすれば、それは自らのものとは異なる文化に接した時の本能的な警戒感や違和感のようなものであったように思われる。

それでも、この動作には周囲の注意を引いたようであり、その場が少しの間固まっていた(苦笑)。

しかし、それも酔った上での行動と認識されたようであり、また徐々に「飲み方」の空気は、和やかなものに戻って行った。またその後、Kでの在住期間に、何度かこれに類するような出来事に遭遇したが、それは決して悪い意味でなく、当地域での感情発露の仕方の一つなのであろうと思われた。

その後の「飲み方」は特に荒れることもなく盛り上がり、私も以前と比べて少しは周囲の方々と打ち解けたような感じを受けたが、それはまた翌週の月曜日になってみないと分からないところであろう・・。

*今回もまた、ここまで読んで頂き、どうもありがとうございます!



ISBN978-4-263-46420-5

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