2020年6月20日土曜日

20200619【架空の話】・其の31

【架空の話】・其の31
こうして日が暮れるまで古墳を見学をしてから車に戻った。そしてまた、言葉数が少ないままで発車し、近くのG南インターチェンジまで戻り、再び高速道路に乗り、W市内に戻るべく北上をはじめた。時刻は午後6時少し前であった。

高速道路を北上するにつれ、周囲に人家などの灯りが増えていった。そして約一時間程走りW南インターチェンジに到着した。そこからさらにW市街の郊外と思しき場所を走っていると、突如、左側にこんもりした森のような一角があらわれた。この辺りは郊外ではあるものの、耕作地以外で、こうした自然環境が道路に面した一角にあることは、不思議であったことから兄に訊ねてみると「ああ、そこも神社だよ。ええと、記紀の神武東征は知っていると思うけれど、その神武天皇の兄にI瀬命というのがいてね、彼等一行は、九州の東岸あたりから出帆して、瀬戸内海を抜けて、現在の枚方あたりに上陸しようとしたらしいんだ・・。海から船で枚方に上陸って云うと現代では荒唐無稽に聞こえるかもしれないけれど、その当時、現在の大阪の多くの部分は、河内湖と云って、淀川や大和川などが流れ込む潟湖、ラグーンだったんだよ。それでまあ、当時、このあたりにも勿論、土着の勢力っていうのがいてね、神武一行は、この勢力と戦うことになったんだけれど、神武一行はこれに苦戦して結局、退却し、現在の東大阪あたりで船に戻り、大阪を離れることにしたんだ。まあ、それだけ、この地では土着勢力が強く根を張っていたんだろうね・・。それで、この大阪での戦いで、神武天皇の兄であるI瀬命は手に矢を受けてしまって、その傷がもとで、おそらく退却した船上で亡くなられてしまったんだ。その亡くなられた場所が、このW辺りで、亡くなられる際に雄叫びを上げたことから、ここの港を昔は雄湊(おのみなと)と云ったんだよ。・・そういえば、この名前は、昨日近くまで行ったT医療保健大学のW看護学部の校舎は元々、雄湊小学校だったということでハナシに出ていたね・・。」とのことであった。

ここで神武東征のハナシが出てくるとは思わず、また、初代天皇の兄の墳墓について少し疑問に思われたことから「でも、神武東征は全くの架空の神話じゃないとしても、全てが全て史実とも云えないよね・・。そうすると、その中にある墳墓は一体、どのような形式で何世紀代のものとされているの?」と訊ねてみると、兄は「いやあ、ここは古墳というよりも神社がメインで、その中にどのような古墳があるかということは、多分、さっきのハナシにも出たけれど陵墓参考地としてあまり調査はされていないようなんだ・・。しかし、この神社の裏山には何らかの古墓があるとは聞いているけれども・・。」といったこれまでの兄からすると曖昧な返事が返ってきた。ともあれ、さきの「I内一号墳」にしろ、このI瀬命を祀る神社にしろ、1日で古代の曰く付きの墳墓や神社のことを経験を通じて知ることが出来たのは、大きな収穫であり、おそらく今後、我が国の古代史に関する著作を読む際にも、捗ることが予想された。そして、車は目的地である中華そば店に到着した。暖房のきいた車から外に出ると、すっかり寒くなっており、駐車場から急いで窓ガラスが若干湯気で曇っている店の中に入った。店内は混雑とまでは行かないが賑わっており、近くに大学があるためか、学生さんと思しき若者が大勢いて、それぞれが陽気に中華そばを食べていた。また、この中華そば店で特筆すべきことは、テーブルの上にのり巻きと、昨晩食べた早寿司を小さくしたようなものと、ゆでたまごが置いてあることである。そして、周囲のお客さん等は、それらを好きな時につまんで食べていた。こうした食文化も初めてであったため兄に聞いてみると「ああ、これがWの中華そば店では主流のスタイルで、昨日のY為食堂は、それがなかったけれど、これはむしろ珍しい方だよ。」とのことであった。我々は今日一日、あまり食事らしい食事を摂ってこなかったため、ここでは少し奮って一番高価な特製大盛の中華そばを注文し、さらに早速、卓上にあった早寿司を食べてみた。この早寿司もまた、なかなか美味しく、おそらく、首都圏のコンビニなどに置いてあったら、頻繁に購入することになるだろうと思われた。やがて、我々の中華そばが運ばれてきたが、兄は中華そばと並行しつつ早寿司を食べていたため、多少違和感を覚えたが、周囲を少し意識して見ると、それは当然のように行われていたため「When in Rome、do as the Romans do.」(郷に入れば郷に従え)とやらで、真似してみると、これが思いのほかに美味しく、感心し、くわえて、よく分からないが、和食の奥深さ、いや懐の深さを感じさせられた・・。また、あとで聞いてみたところによると、このWという場所は和食に必要不可欠な醤油、かつおぶし発祥の地とのことであり、これはおそらく、その気候風土が強く影響しているのではないかと思われるのだが、さて、どうだろうか?

*今回もまた、ここまで読んで頂き、どうもありがとうございます!


新版発行決定!
ISBN978-4-263-46420-5

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