2020年11月21日土曜日

20201120 株式会社新潮社刊 大岡昇平著「俘虜記」pp.13-15より抜粋

株式会社新潮社刊 大岡昇平著「俘虜記」pp.13-15より抜粋ASIN : B00J861M36

 私は既に日本の勝利を信じていなかった。私は祖国をこんな絶望的な戦に引きずりこんだ軍部を憎んでいたが、私がこれまで彼等を阻止すべく何事も賭さなかった以上、今更彼等によって与えられた運命に抗議する権利はないと思われた。一介の無力な市民と、一国の暴力を行使する組織とを対等に置くこうした考え方には私は滑稽を感じたが、今無意味な死に駆り出されて行く自己の愚劣を笑わないためにも、そう考える必要があったのである。

 しかし夜、関門海峡に投錨した輸送船の甲板から、下の方を動いて行く玩具のような連絡船の赤や青の灯を見て、奴隷のように死に向かって積み出されて行く自分の惨めさが肚にこたえた。

 出征する日まで私は「祖国と運命を共にするまで」という観念に安住し、時局便乗の虚言者も、空しく談ずる敗戦主義者も一絡げに笑っていたが、いざ輸送船に乗ってしまうと、単なる「死」がどっかりと私の前に腰を下ろして動かないのに閉口した。

 私の35年の生涯は満足すべきもではなく、別れを告げる人はあり、別れは実際辛かったが、それは現に私が輸送船の上にいると云う事実によって、確実に過ぎ去った。未来には死があるばかりであるが、我々がそれについて表象し得るものは完全な虚無であり、そこに移るのも、今私が否応なく輸送船に乗せられたと同じ推移をもってすることが出来るならば、私に何の思い患うことがあろう。私は繰り返しこう自分に言い聞かせた。しかし死の観念は絶えず戻って、生活のあらゆる瞬間に私を襲った。私は遂にいかにも死とは何者でもない、ただ確実な死を控えて今私が生きている、それが問題なのだということを了解した。

 死の観念はしかし快い観念である。比島の原色の朝焼夕焼、椰子と火焔樹は私を狂喜させた。至る処死の影を見ながら、私はこの植物が動物を圧倒している熱帯の風物を眼で貪った。私は死の前にこうした生の氾濫を見せてくれた運命に感謝した。山へ入ってからの自然には椰子はなく、低地の繁茂に高原性な秩序が取って替わったが、それも私にはますます美しく思われた。こうして自然の懐で絶えず増大して行く快感は、私の最後の時が近づいた確実なしるしであると思われた。

 しかしいよいよ退路が遮断され、周囲で僚友が次々に死んで行くのを見るにつれ、不思議な変化が私の中で起こった。私は突然私の生還の可能性を信じた。九分九厘確実な死は突然推しのけられ、一脈の空想的な可能性を描いて、それを追求する気になった。少なくとも、そのために万全をつくさないのは無意味と思われた。

2020年11月19日木曜日

20201119 頭頂部の危機的状況から思ったこと

ここ直近数回の投稿記事は【架空の話】の続きや、加筆修正分としました。そして本日もまた【架空の話】の続きを作成しようと考えていましたが、昨夜自身に驚くべき発見があったため、そのことを書こうと思います。

昨夜24:00過ぎに入浴を終え、洗面所の前で身体をタオルで拭いていると、自身の頭頂部が部分的に肌色に近い色合いを示していることに気が付きました。そういえば、ここ最近は朝、目が覚めると、目立つ程度に毛髪が枕に付着していましたが、そうした経緯を経て、今回の発見になったわけですが、これは自身としては少しショッキングな出来事であり、もし挽回出来るのならば、したいところですが、とりあえずは、夜遅くまで起きているのを止めようと思いました。しかし他方でブログ記事の作成は継続したいとも思いますので、作成開始時間をある程度定め、早めのルーチンとして設定すれば良いのではないかと考えました。

もちろん、仕事などとの兼合いで、継続し、そのように作成出来るかは不明ではありますが、やはり、このまま頭頂部の毛髪がなくなってしまうというのは、今後「モテ期」を三度程は経験することを欲している(これまでにはなかったと思います。)自身からしますと、かなり不本意に近いと云えることから、これは出来るだけ順守し、頭頂部の残存毛髪の保護および新規育毛を心がけていきたいと思います。

さて、先日来の宮地正人著「幕末維新変革史」はあまり頁が進まずに現在上巻の400頁あたりです。おそらく今月中には読了出来ると思われ、来月には同著下巻を読み進めていければと考えています。また他にも面白そうな書籍は見つかっており、今後は、より一層、ブログ記事作成の時間と共に書籍を読む時間を出来るだけ長く確保する必要があると云えます・・。

しかし、よくよく考えてみますと、そのような願望と、さきの「モテ期」三回とは、あるいは矛盾する願望であるのかもしれません・・。そして、もしも本当にそれらが矛盾するものであるのならば、私はどちらをより優先して望み、そしてそのように行動するのだろうか・・。今までであれば、間違いなくブログ記事の作成と読書であったと云えます(苦笑)・・。しかし、今後はそれを少し変える必要があるのかもしれません・・。

*今回もまた、ここまで読んで頂き、どうもありがとうございます!


ISBN978-4-263-46420-5

~勉強会の御案内~
歯科材料全般あるいは、いくつかの歯科材料に関する勉強会・講演会の開催を検討されていましたら、ご相談承ります。また、上記以外、他諸分野での研究室・法人・院内等の勉強会・特別講義のご相談も承ります。

~勉強会・特別講義 問合せ 連絡先メールアドレス~
tsurukiclinic2001@gmail.com
どうぞよろしくお願いいたします!
鶴木クリニック医科・歯科
*歯科衛生士さん募集中*



2020年11月17日火曜日

202011117【架空の話】・其の1・2加筆修正

21世紀に入り、今後さらに進行する高齢化社会に対応すべく、国内各地に医療介護系の大学・学部・学科が新設され、また、既存の医療介護系専門学校も、新たに専門職大学に改組され、さらに、それらが合併するといった事態も生じてきた。そして、そうした高等教育における状況から、人文社会科学分野を専攻する学生数は徐々に減少していった・・。

さて、こうしたことを話している私は元来、人文社会科学分野を背景とする人間であり、A大学のヨーロッパ文化専攻に進んでいた。そして、この専攻分野では卒業しても、あまり実入りの良い就職口に就けそうにないことを3年生になってはじめて気が付いた。そこで「後悔先に立たず」から「毒を食らわば皿まで」と方針の転換を行い、同専攻の修士課程に進むことにした。

ともあれ、それは修士課程まで進むことにより「これまでとは違ったビジョンが見え、より良い選択肢を見つけることが出来るのではないか」と考えたのであるが、他方で、面倒で困難な選択をなるべく避けて「出来る限り安逸に生きていたい」といった願望が全くなかったとも言い切れない・・(苦笑)。くわえて、専攻分野について「自分は多少のセンスがある」と現実を知らずに思い込んでいたフシもあったと云える・・(苦笑)。

そのようにして大学院修士課程に進んだわけであるが、その院生生活は学部生の延長のような部分も少なからずあり他方で、研究のための文献を読む時間については、学部生であった頃と比べ、履修科目が減ったことから、かなり増やすことが出来た。また、以前からの通学路途中にあるS駅近くの古着屋でのアルバイトも継続した。このお店は、店長の趣味か、なかなかシブイ、古い映画作品に出てくるような品が並ぶことが度々あり、当アルバイトは、店長との会話を契機として、なんとなく働くようになったという経緯があった。

勤務時はしばしば、客が手にする商品について、(長々と)ウンチクを語ってしまうことがあり、時々やんわりと、店長から注意を受けることがあった・・(苦笑)。とはいえ、もともとは店長自体がウンチク好きであり、かつて客であった私と店長が話をしたきっかけも、そうした共通認識があったことから、その内容は「そういうことを人に説明したいと思うはよくわかるけれども、多くのお客さんは、あまりそうしたウンチクを聞きたいとは思っていないから、そこまで熱心にやらなくても大丈夫だよ・・。」といった感じであった。それでも、自分が良いと思った品についてハナシかけたくなってしまうのはごく普通の心情であると思われるのだが・・。

さて、アルバイトと参考資料・文献の読み込みや、調べものと多くはない履修科目の予習・復習と少しの遊びで、修士課程1年目を終え、2年目では通常であれば、本格的な就職活動を行うことになるのであるが、私の方はどうしたわけか、就職活動に身を入れることはせず、アルバイトは相変わらず続けつつ、割合ダラダラとした日々を過ごしていた。周囲の院生やゼミの学部生などは、リクルートスーツを着て大学でも就職支援センターなどに頻繁に出入りする中、私といえば色落ちしたジーンズにヨレヨレ(洗いざらし)のボタンダウンシャツで図書館と院生研究室ばかりに出入りしており、面識のある教員の方々からは「君はこの先どうするつもりなのかね?」と、あまり興味なさげに訊ねられることも幾度かあった・・(苦笑)。

当時の私は傍から見る、どのように見えていたのだろうか?いや、そのようなことは今となってはどうでも良い。それよりも、ここからが、少し重要なくだりになってくるのだが、GWが終わって梅雨に入る少し前の時期、どうしたわけか、突然、右下の歯が痛くなり、シフトで入っていたアルバイトも早退し、一端自宅に戻り保険証を手にして近所の歯科医院に、かなり久しぶりに訪問した。その院長は、かつて、どこかの歯科大学か大学歯学部で講師か助(准)教授まで勤めていたとのことであり、時折、商店街や駅の近くで見かけることがあったが、気安く話しかけるには纏っている緊張感が強すぎるように感じられた・・。しかしながら腕は確かであると近所では評判であり、実際、私の家族も皆、そこでお世話になっていた。

さて、そうした経緯で歯科医院に入ってみると、丁度、院長が開封したての学会誌のような雑誌を院内入ってすぐの待合室で立ち読みしていたようであり、雑誌を持ちつつ、こちらに目を向け「おお、**君じゃないか・・。久しぶり、どこか歯でも痛くなったのかね?」と聞いてきたので「ええ、どうもお世話になっています。実は右下の歯が少し痛みますので先生に診て頂きたいのですが・・。」といった感じで、右顎に手を触れさすりつつ少し自嘲気味で答えた。」すると「ほお、そうですか・・。君はとてもラッキーだね。丁度今、予約していた患者さんが急な事情でキャンセルになったところなので、すぐに診てあげれるよ。」とのことであった。普段、あまり運の良し悪しについて考えない私も、これには少し「運が良い」と感じ、また、それが外出先にて腹痛を起こし、飛び込んだ先の施設で清潔なウオッシュレット付きトイレが空いていた時の感覚によく似ていることに気が付いた・・。

その5分後には、私は診療チェアーの上にいた。診療がはじまり、痛む歯の部分だけをくり抜いたゴム製の布のようなものを被せられている時、以前の診療時にはいなかった女性スタッフが先生のサポートにあたっていることに気が付いた。見たところ、私と同年代であるように見えたが、次第に治療が本格的になってくると、そのようなことも意識が向ける余裕はなくなり、歯の真中を細い鋸のようなものが、ギシギシ云いながら歯髄の方に迫ってくる感覚には久しぶりの冷汗が流れた。とはいえ、その治療自体は、そこまで苦痛はでなかった。治療後の先生の説明は「右下の臼歯で、以前に根っこの治療をした場所に再び膿が溜まって、それで痛かったのだと思う。とりあえず、穴を空け、排膿してから洗浄して仮に封をしておいたから、また近いうちに来てください。」とのことであった。

私はその説明をただ頷いて聞いていたが、しばらくすると先生の方から「そういえば**君は今、A大の大学院生でしたっけ・・。それで、何を専攻しているのかな?」と訊ねてきたため「ええ、文学研究科のヨーロッパ文化専攻です・・。」と少し遠慮気味に答えた。

すると「それはまた何だか面白そうですね・・。それで、具体的な研究テーマは何ですか?」とさらに踏み込んで訊ねてきたことから「ええ、近現代のイギリスに帰化した作家の特徴のようなものをジョゼフ・コンラッドという作家を中心として研究しています。」と、これは割合具体的に答えたが、先生の方は「ふーん、それはノーベル文学賞のカズオ・イシグロ氏も範疇に含まれるのですか?しかし何だか難しそうなテーマですね・・。それで院の修了後はどうするつもりなのですか?」と、あまり思っていなかった方向に質問が行ったことから「・・はあ、順調に行けば来春には修士課程を修了して、どこかに就職したいとは考えていますが、正直なところ就職については今現在あまり考えていません・・。」と今度は尻すぼみ気味に返事をした。

すると、先生はしばらく天井を見て、意を決したかのようにこちらを向いて「少し前に私が出たK大学のあるK県に、公立と私立の中間のような、まあ第三セクターによって運営される医療介護系の専門職大学が設置されてね、そこでは私の仕事とも大いに関係がある歯科衛生士と歯科技工士を養成する学科が設置されているのですがね・・。それで歯科衛生士の方の学科、まあ、口腔保健学科と云うのだけれど、こちらは割合人気があって心配無用なのですが、もう一つの歯科技工士を養成する学科、これは口腔保健工学科と云うのですが、こちらの方はどうしたわけかあまり人気がないのです・・。まあ、それが理由かどうか分かりませんが、今年の夏に学士編入試験を行うという連絡が来て、それで「誰か良い学生さんを知りませんか?」と、現在その大学で教鞭を執っている同期の友人に尋ねられたのですが、そこで少し唐突ですが**君はこういった話には興味はありますか・・?」と少し伏線のある質問を投げてきた。

私は、歯科技工士云々よりも、とある理由から、その大学があるK県の方に興味を持った。そこで先生に「先生はK大学のご出身だったのですね・・。それで元々はそちらのご出身なのですか?」と、本題からは少し外れた質問をした。すると「・・ああ、知らなかったっけ、たしか君のお父さんはよく知っていると思ったのだけれど・・。まあ、それはいいけれども、私は元々こちらの出身ですが、学生時代からは、しばらくK県に住んでいたのです。そういえば、だいぶ前に君のお父さんに聞いたことがあったけれども、君の家は元々はK県の出身だそうですね・・。」先生のこの返事で、少し先回りをされた感があったが、私は「ええ、そうなのです。だいぶ前、それこそ明治時代にご先祖がk県から上京して、こちらの学校に通い、仕事に就き、居着いてから3世代ほど経っているのですが、如何せん、あちらの苗字は変わったものが多くて、私も根っから、こちらの人間であるはずなのに、苗字からK県出身者と間違われることが度々あるのです・・。あと、現在も大学での数少ない友人はこのK県の出身者でして・・」と話しているうちに、その数少ないというよりも、唯一と云っても良い友人であるBのことを思い出していた・・。

*今回もまた、ここまで読んで頂き、どうもありがとうございます!





一般社団法人大学支援機構

~書籍のご案内~
ISBN978-4-263-46420-5

~勉強会の御案内~
歯科材料全般あるいは、いくつかの歯科材料に関する勉強会・講演会の開催を検討されていましたら、ご相談承ります。また、上記以外、他諸分野での研究室・法人・院内等の勉強会・特別講義のご相談も承ります。

~勉強会・特別講義 問合せ 連絡先メールアドレス~
tsurukiclinic2001@gmail.com
どうぞよろしくお願いいたします!
鶴木クリニック医科・歯科
*歯科衛生士さん募集中*



2020年11月16日月曜日

202011116【架空の話】・其の46

店内の鳥を焼く薫りは、既知の首都圏での焼き鳥の薫りと、同じ鶏ではあれ、少し違うように感じられた。その後、さきに出た霧島本店にも何度か足を運ぶことになったが、この当初の感覚は、多少オーバーな表現ではあったかもしれないが、しかし、あながち間違いでもなかったように思われる・・。

ここで私は人生初で鶏の刺身を食べたわけだが、その味は粗く述べると、魚の刺身から磯の香を差し引き、尚且つ少し繊維質を強めにした感があり、また味の詳細については部位によっても異なると云える。

くわえて、盛られた刺身の中に鶏のレバ刺があり、これは当初、食べるのを相当躊躇した。なぜならば、私は昔からレバーこと肝臓を用いた料理が苦手であったからだ。対照的に、現在Wに住んでいる兄は、昔からどうしたわけか、そうした料理が好物であり、特にレバーペーストやレバーヴルストには目がなく、それらを褐色で硬めのローマン・ブレッドに塗り付け、サンドウィッチのようにして食べるのをことのほか好んでいた。

さて、この鶏のレバ刺にハナシは戻る。これになかなか箸をつけないのを見て、しびれを切らしたと見えるBが「このレバ刺が美味しいんだよ。初めてで少し気乗りがしないのかもしれないけれども、一つ食べてみなよ。」と促してきた。私の方も敢えて箸をつけないでいたことがバレてしまった恥ずかしさもあり、それを取消すかのように「あ、そうだった。じゃあ食べてみるわ。」と云い、一つ箸でつまみゴマの薫りのするタレに少しだけつけてから食べてみると「何だこれは!?」となった。たしかにレバー特有の匂いは少しだけあるものの、鼻に抜けるその薫りはむしろ上品であり、また、その味には自然な甘みがあり、独特の少し歯ごたえのある食感が渾然一体となって、次の一切れを取るようにと、私を誘うのであった・・。

こうして2切れほど続けて食べていると、Bが「どう、結構美味しいでしょ。このお店に来ると、どうもレバ刺は注文するんだよね。」と云ってきた。私はそれを聞きつつ、頷いて「うん、これはかなり美味しいね。今までレバ刺を食べなかったことが、もったいなく思えて来るほどだよ・・。」と正直に思ったことを伝えた。するとBは「いやいや、東京ではこんな美味しい鳥のレバ刺は多分食べることが出来ないと思うよ・・。やはり、こっちの環境というものがあって、はじめてこうしたものを普通のお店レベルで美味しいものとして提供することが出来るのだと思うよ。その意味でここKは、大陸にも近いし、南の沖縄では、さらに大陸に近いことから、昔から肉食文化があったのだけれども、ここkでは、そうした地域性もあって、鶏の刺身も普通に食べるし、沖縄では山羊を刺身で食べるって聞いているからね・・。あとは北隣のK県では馬刺しが有名でしょ。だから、こっちの食文化は何ていうかな、刺身(生食)文化が魚類に収斂される以前の古い要素が残されているんだと思うよ。」とのことであったが、たしかにその意見には「百聞は一見に如かず」のような体感レベルからの説得力があり、たとえ全く同じ意見を首都圏にて聞いたとしても、ここまで深くは心に刻まれなかったであろう・・。

さて、普通の皮付きのたたきのような鳥刺しを食べると、そこでつける醤油がやけに甘いことに驚いたが、それは未経験のものではなく、以前、編入試験の際に立寄ったT文館のY形屋デパート近くのラーメン屋さんにて出てきた大根の浅漬けを食べるための醤油もまた、まさにこんな感じでった。

私はBに「こっちの醤油は大体こんな風に甘いの?」と訊ねてみると「うん、ここ九州の醤油は全体的に甘いけれども、その中でもここKの醤油は特に甘いと聞いているね。まあ、でも、この甘い醤油が鳥刺しには合うんだよね。」という返事が返ってきたが、それもまた「なるほどと思わせる」妙な説得力があり、あまり反論する気にならなかった・・。

ほかにも当店自慢という鶏めしや桜島の溶岩をプレートとして用いた焼き肉のような焼き鳥を十二分に堪能させてもらい、店を出ようとお会計をお願いすると、店員が持ってきた伝票をBが半ば強引に受取り、金額を渡した。私が自身の分の代金を支払おうとすると、Bは「ここは俺が支払うから!」と制止してきた・・。ここでBにご馳走になる理由は特にないことから、その旨を伝えると「いやいや、Cさんのこともあるから・・。」と云われ、そこで無言ながらハッと感覚的には納得するに至ったものの、ここでの支払いとBとCさんが付き合っていることの明確な関係性は、イマイチよくわからなかった・・。

*今回もまた、ここまで読んで頂き、どうもありがとうございます!





ISBN978-4-263-46420-5

~勉強会の御案内~
歯科材料全般あるいは、いくつかの歯科材料に関する勉強会・講演会の開催を検討されていましたら、ご相談承ります。また、上記以外、他諸分野での研究室・法人・院内等の勉強会・特別講義のご相談も承ります。

~勉強会・特別講義 問合せ 連絡先メールアドレス~
tsurukiclinic2001@gmail.com
どうぞよろしくお願いいたします!
鶴木クリニック医科・歯科
*歯科衛生士さん募集中*



2020年11月14日土曜日

202011114【架空の話】・其の45

この市電こと路面電車からは何やらエキゾチック(異国情緒)あるいはノスタルジック(懐旧的)な感覚が惹起せられ、現在となっては慣れてしまったものの、それでも私は路面電車が走る西日本の街が何となく好きである。

T文館通り駅に着いたのは午後6時40分過ぎであり、金曜日ということもあり、繁華街らしく賑わっていた。私はBに「じゃあ荷物だけ置きたいから、ちょっと**ホテルに寄ってチェック・インだけしてきてもも良いか?」と訊ねると「ああ、**ホテルは道を渡ってすぐそこだから、問題ないよ。」とのことであり、一先ずホテルに向かうことにした。以前、編入試験の際に宿泊したホテルよりも若干安かったため今回は**ホテルに予約をしたが、着いてみると、たしかにつくりは前の宿泊ホテルよりも若干古く感じられたものの、掃除が行きわたっているのか全体的に清潔な感じがした。そしてフロントにてチェック・インを済ませ鍵を受け取ると、部屋は7階とのことであった。エレベーターにて部屋に行こうとすると、Bが「地元のこうしたビジネス・ホテルの客室には、これまで行ったことがないから、ちょっと部屋を見せてよ。」と云ってきた。断る理由もないことから「うん」とだけ云って、エレベーター前の立ち位置を少しだけずらした。やがてエレベーターが着き、7階のボタンを押すと、最上階は9階であるらしく「今回はまたやけに上階に部屋をとってくれたな」と独り言のように云うと、Bは「うわ!何だか地元のビジネス・ホテルに入るって面白い感覚だな・・。」と、さきほど銀行からの電話を受けていた態度とは異なり、多少年齢不相応とも云える感じで、はしゃぎ気味であったが、特に気にはならなかった。自分も同じ環境にいれば、はしゃぐような真似はしないという保証はどこにもないからだ・・。

ともあれ、じきに7階に着いて薄暗い廊下を歩き部屋に向かっていると、Bが「ああ、こっち側の部屋だとT文館側じゃないから、あまり景色は良くはないと思うよ。」とのことであったが、まあ、今回の場合、部屋からの眺望すら気にしていなかったことから「まあ、今回は普通に宿泊できれば良いから・・」と控えめに云うと「うん、まあ、たしかにそうだけれどね。」と私につられたのか、静かな調子で返事をしてきた。

部屋に着きドアを開けると、すぐにルームキー・ホルダーを差し込む穴が壁に設置してあり、そこにホルダーを挿入すると自動的に室内照明が点灯するようになっており、私はこれまでにも経験したことがあったが、Bの方は「へえ、こりゃすごいな・・。」と感心していた。

やがて荷物を客室に置き、またすぐに部屋から出ると、となりでBがスマホの操作をはじめ、そして、そのままでエレベーターに乗り、降りてからすぐに電話をかけはじめた。すぐに繋がったようであり、何やら二言三言先方と話してから「それじゃあ、大体5分後に、着くようにしますので、よろしくお願いします。」と云って話を終えた。そして私に「うん、予約は出来たから、ここからは1、2分でお店に着くから、ちょっとトイレに行ってくる。」と言い残して、そそくさとフロントロビー横のトイレの方に行った。」しばし待っているとBが戻ってきて「どうもありがとう。じゃあ行こうか。」と正面玄関からホテルを後にしてT文館の繁華街の方に向かって歩き、そこを過ぎた交差点を渡ると、また飲食店が並んでいたが、その中の一つのお店に入ると、店内から鳥を焼く薫りと会話の声が聞こえてきた。どうやら繁盛しているお店のようであり、Bによると「このお店は本店は霧島の方にあり、こちらのお店も最近開店したのだけれど、なかなかの評判なんだよ。」とのことであった。また、気のせいかもしれないが、たしかに店内の鳥を焼く薫りは、それまで首都圏で慣れてきた焼き鳥の匂いと、同じ鶏ではあれ少し違うように感じられた。その後、このお店は、さきの霧島本店にも何度か足を運ぶことになったが、当初の感覚は、少しオーバーな表現ではあったかもしれないが、あながち間違いでもなかったように思われる・・。

*今回もまた、ここまで読んで頂き、どうもありがとうございます!






一般社団法人大学支援機構

~書籍のご案内~
ISBN978-4-263-46420-5

~勉強会の御案内~
歯科材料全般あるいは、いくつかの歯科材料に関する勉強会・講演会の開催を検討されていましたら、ご相談承ります。また、上記以外、他諸分野での研究室・法人・院内等の勉強会・特別講義のご相談も承ります。

~勉強会・特別講義 問合せ 連絡先メールアドレス~
tsurukiclinic2001@gmail.com
どうぞよろしくお願いいたします!
鶴木クリニック医科・歯科
*歯科衛生士さん募集中*






2020年11月13日金曜日

20201113【架空の話】・其の44

また、キリの良い金額になっていたことから同意し、契約することにした。比較的早く済んだ部屋探しであったものの、現在となっても、これは悪くない契約であったと思われる。

不動産屋さんに戻り、必要書類の記入事項などを埋め、保証人などについての書類をまとめてファイルに入れて頂き、帰宅して作成の後、郵送することになった。さて、割合早く部屋探しは終えたものの、物件をいくつか見たため既に陽は沈みかけていた。また、復路の飛行機は明日であることから、特に急ぐ必要はなかったが、こと、ここまで至ると次は「早く安心したい」という気持ちが出てくるようであり、Bと共に不動産屋さんを出て駐車場の車に向かっていると、Bの携帯電話が鳴った。それを取り出し、発信元をたしかめると、Bは指を立てて唇に当て、静かにするようなゼスチャーをしてから電話に出た。そして、背筋を伸ばして神妙な調子で電話応対をして「・・はい、延岡支店ですか。承知しました。大丈夫です。では、また次の内定者研修の際に。失礼します。」といった感じで通話を終えた。やがて携帯電話をちょっと慎重な感じでポケットに戻すと、少し間を置いて「・・初の赴任先が宮崎県の延岡になったよ・・。多分、実家から通えると思っていたのだけれど、延岡はさすがに遠いなあ、こりゃ、また一人暮らしだよ・・。」と、独白ともとれるような調子で話した。

私は「延岡かあ、あそこは宮崎県でも北寄りの大分県に近いところだよね・・。そういえば、さっきのお好み焼きさんのご主人の息子さんの通っている大学も延岡って云っていたよね・・。」と話しかけると、少し間を置いてから「ああ、そうだったね・・。まあ、初めての赴任地は実家から少し離れている方が良いかもしれないしね・・。」と、あまり噛み合わない返事が帰ってきたが、どうやらそこまでは不本意ではなかったようで、しならく車を運転していると調子が戻るというか、いつものBよりも少し多弁にすら感じられ、そして「ええと、帰りの飛行機は明日で、宿はたしかT文館だったよね。それじゃあT文館あたりで夕食にでも行こうか?」と訊ねてきた。私は「また美味しいお店を知っていたら教えてよ。前の試験の時に聞いた「餃子の**」もなかなか良かったけれど、今日は折角だからKらしいものが食べてみたいね・・。」と云ったところ、Bは少し斜め上を見てから「ああ、そういえば、こっちの方では鶏をたたきや刺身で食べる文化があるのだけれど、それは食べれそう?」とさらに訊ねて来た。私は「ええ!鶏肉を生で食べて大丈夫なの?いや、こっちの人達がそうやって食べていて大丈夫であれば僕も大丈夫だと思うし、あと、それに感覚的に「無理」ということもなく、良い機会だから食べてみたいなあ・・。」と返事をすると。Bは「オッケー分かった。じゃあ、大体のプランは出来たから、とりあえずは車を家に停めよう。」と云って、また少し背筋を伸ばして、ストレッチのような仕草をした。Bの実家は、付き合っている歯科衛生士のCさんのご実家があるY野とは方角が異なり、粗く云うと南側の指宿や枕崎寄りの市電終着駅近くのK市街地辺縁部にあった。その辺りは新興住宅地として造成されたようで、割合新しくキレイな家が建ち並んでおり、初見では、首都圏近郊のそれとも、あまり有意な違いを見出すことは出来なかった。

ともあれ、Bは車を実家駐車場に停め、家のドアを開け「今、戻って来てまた出かけるから、帰りは多分10時過ぎになる。それと、また明日車使うからね。」と、これまた、さきに聞いたイントネーションで云うと返事を待たずに、すぐにこちらに戻ってきて「じゃあ、行こうか。」と云いつつ歩き出した。陽は既に沈み時刻は午後6時少し前であった。比較的大きい通りに出ると、マクドナルドやガストが目に入ってきて、その通り沿いになおも進むと市電の駅に到着した。

市電は路線内のどの駅までであっても同一料金の170円とのことであった。そこから約30分ほど市電に乗っていると、やがて以前にも見たT文館の景色が目に入って来た。ともあれ、以前にも少し書いたが、この市電こと路面電車からは、何やらエキゾチック(異国情緒)あるいはノスタルジック(懐旧的)な感覚が惹起せられ、現在となっては慣れてしまった部分もあるが、それでも私は路面電車が走る西日本の街が何となく好きである。

*今回もまた、ここまで読んで頂き、どうもありがとうございます!




ISBN978-4-263-46420-5

~勉強会の御案内~
歯科材料全般あるいは、いくつかの歯科材料に関する勉強会・講演会の開催を検討されていましたら、ご相談承ります。また、上記以外、他諸分野での研究室・法人・院内等の勉強会・特別講義のご相談も承ります。

~勉強会・特別講義 問合せ 連絡先メールアドレス~
tsurukiclinic2001@gmail.com
どうぞよろしくお願いいたします!
鶴木クリニック医科・歯科
*歯科衛生士さん募集中*









2020年11月10日火曜日

20201110【架空の話】・其の43

もしもお好み焼きに麺が入っていたならば違っていたかもしれないが、とりあえずは完食することが出来た。またBの方も同様で、完食後も落ち着いた様子で、店内設置のテレビで番組を観たり、スマホ操作などをしていた。

後続の客はあまりいなかったため、その後店内は混雑せず、急かされることもなく食後の休憩が出来たが、一段落着いたと見える、さきほどの店主がこちらのテーブルにやってきた。スマホを触っていたBはそれに気が付くと、急いでスマホを椅子にかけてあるウィンド・ブレーカーのポケットに押し込み、立ち上がった。すると店主は「やあ、どうも久しぶりだね。その後K銀行に行くことになったと聞いているけれど・・。」と訊ねてきたが、そのイントネーションは首都圏では聞かれない独特のものであった。それに対しBは「はい、おかげさまで、どうにか入行しました。それと**君は、たしか今年が国家試験かと思いますが?」と訊ね返した「**君」とは、話の雰囲気からして、店主の息子さんのようである。すると店主は「そうそう、もうじき2月末に国家試験があるとかで、去年の年末はこっちに帰ってこなくてね、大学のある延岡の方で籠って勉強していたよ・・。まあ、上手くいけば良いけれどね・・。それと来年は下のヤツが受験でね・・これは女の子だから、出来るだけ近くの大学が良いと考えているんだけれどね・・。」といった会話をしていた。

私は方は特に話題に入ろうとはせずに、ぼんやりとテレビを観ていたが、しばらくして「じゃあ、また。」といった感じで店主がカウンターの向こうに戻ると、Bも椅子に座り、しばらくは威儀を正していたが、やがて落着き、私に「それじゃあ、もうすぐ出ようか?」と聞いてきた。私の腹も随分こなれて落着いたことから、同意する代わりに、荷物をまとめて立ち上がった。Bはそれを見て、先にレジの方に行き支払いをしようとしたらしいが、さきほどの薄い紺のエプロンの女の子に何か云われて、困ったような顔をしていた。どうやら、店主から代金を受け取らないように云われているようであった。私も財布を出して、代金を支払おうとすると、それをBが止め、そしてまたそのBの支払いを女の子が止めるという、少しおかしな状況が現出したわけであるが、奥の方から店主の声で「また、娘の進路の件で親父さんに話を聞いてもらうかもしれないから、今日の支払いは一先ずナシっちゅうことで。」と云われてBも引き下がり「それではご馳走になります。」と柱などでハッキリとは視認出来ない店主に向かって頭を下げた。私もそれに倣って頭を下げ「ありがとうございます。ごちそうになります。」と御礼を述べた。

店から外に出ると、あらためて寒さが肌を刺したが、天気は晴れており陽はさしていた。そしてまたBの軽バンに乗ると「ここからはすぐだから。」と云って発車した。コトバ通り、そこから1、2分で不動産屋の駐車場に着いた。そしてまたBを先頭に自動ドアから店舗に入ると「ああ、どうも、ハナシは聞いていますよ。後ろの方が部屋をお探しの方ですか?」と、これまた、さきと同様の独特のイントネーションで、ブラウスにベストといったオフィスの制服らしきものを着た「元気な50代」といった感じの女性が声を掛けて来た。私は「はい、そうです。どうぞよろしくお願いします。」と云ってはみたものの、それよりもBが「ええ、今回はよろしくお願いします。」と、これまで聞いたことのなかった、大きな声の郷音にて返事をするのに少し驚き、圧倒された。


女性の方は、そういった返事を聞くまでもない様子でダウン入りのベンチコートのような至極暖かそうなコートを羽織り、キーボックスから自動車の鍵を取り出し、こちらの方にやってきて、カウンターの上に置いてあったそこそこ厚いファイルを抱えて「それじゃあ、早速に見に行こうか。」と我々を促した。

おそらく店内に入ってから1分もしないうちに再度、外に出ることになったわけであるが、こうした反応の速さもまた、一つの飾らないサービスなのだろうと感じられた・・。


そして、ワゴンの社用車にて、アパートを何件か廻ることになったが、この女性スタッフは車内でも運転しながら気さくに話しかけてくれて、こちらの希望も過不足することなく自然に伝えることが出来たように思う。

何件目かの物件が、丁度市電の駅とJR線の駅が重なる、K大学病院の最寄り駅から徒歩10分程度の大学病院へのぼる坂のふもとにあるアパートであったが、このアパートの住人の殆どはK大学の医療系の学生さんとのことであり、たしかに駐車場には学生さんが好みそうな感じの自動車が何台か停まり、また、その中には、ご実家が裕福なのか、外国車も停めてあった。

また、女性スタッフは、私が進むことになった口腔保健工学科は、実習などでk大学に行くことが多くあると聞き、それで、このアパートの立地は、専門職大学のキャンパスへも市電か自転車などで通うことが出来るから、良いのではないかといった意見を述べられた。

このアパートは家賃は特別に安いわけではないが、その立地が良く、また部屋が比較的キレイで広かったことから、一番好ましく感じられた。ともあれ、少し逡巡した様子でいると、それまでは無口であいたBが横からボソッと「ああ、ここだったら良いね。」と云ったことから「分かりました。あとの候補もあるかもしれませんが。ここが良いと思います。しかし、もしも、ここに決めましたら、少なくとも3年間は住むことなると思いますので、少しだけでも家賃などをお値引きして頂けれましたら、大変ありがたいのですが・・。」と云ってみると、女性スタッフは「そうですね。でもこの物件は、とても良い場所にあって、部屋も新しくキレイなので、ほっておいても入居希望者はいらっしゃいますので・・。」といった強気な返事であった。

そこで「これは、もう値下げ交渉はダメだろう。」と観念すると、またBが「分かりました。じゃあ、他の物件を見に行きましょう。」と双方を見て云うと、スタッフの方は少し黙ってから、ファイルを開き、続いて電卓を弾いてから、おもむろに「・・じゃあ、Bさんのご紹介だから、他の人に云わないでくださいよ・・。と云って「ひと月の家賃」とのことで電卓の数字を示した。その数字は当初よりも数千円程度下がり、またキリの良い金額になっていたことから、そこで同意して、契約をすることにした。割と早い部屋探しであるものの、後になり現在となっても、それは悪くない契約であったと思われた。

*今回もまた、ここまで読んで頂き、どうもありがとうございます!





ISBN978-4-263-46420-5

~勉強会の御案内~
歯科材料全般あるいは、いくつかの歯科材料に関する勉強会・講演会の開催を検討されていましたら、ご相談承ります。また、上記以外、他諸分野での研究室・法人・院内等の勉強会・特別講義のご相談も承ります。

~勉強会・特別講義 問合せ 連絡先メールアドレス~
tsurukiclinic2001@gmail.com
どうぞよろしくお願いいたします!
鶴木クリニック医科・歯科
*歯科衛生士さん募集中*