2020年9月17日木曜日

20200917 其2 株式会社筑摩書房刊行 山田風太郎著 「戦中派虫けら日記」p.364

昭和19年6月5日
○科学の世界と芸術の世界は截然として二つに分かれている。この壁に小さな孔をあけて往来する人もあるが、天の炎をとって来てこれを渾然と溶かしてしまう人は稀である。-こんなことを寺田寅彦がいっていたような気がする。

 むろん自分もこの凡人の範疇から脱することはできない。両者の間に孔があるとさえ感じない。

 一日、恐ろしく頭が科学的なことがある。こういうときにはそうしても小説など読む気にはなれない。一日、恐ろしく空想と幻想に酔う時がある。こういうときにはいかにしても科学的なことに手が付かない。この変化は、彼方に忽然と立ち、此方に忽然と現れる。全然別人のようである。

 天の炎をとって来て両者を融合させたらどういう世界が現れるか、全然見当もつかない。

株式会社筑摩書房刊行 山田風太郎著 「戦中派虫けら日記」
ISBN-10 : 4480034099
ISBN-13 : 978-4480034090


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