2017年11月21日火曜日

20171121 歯科材料の分類:② 金について

さきの記事において、その良好な諸性質により、金が最も歯科材料として優れていると考える方々が少なからずおられると記したが、その背景について今しばらく記すと、まず、金とは、他の金属のように鉱石より還元、精錬といった高温の炎を用いる工程を経ずに、砂金のように自然界からそのまま金属の状態にて得ることが出来ることが挙げられる(鉱石に対して炎を用いる精錬方法もあるが)。

もとより、その産出地域はある程度限定されるのだが、この性質に加え、比較低い温度(1064℃)にて溶融可能であることから、おそらく我々人類がはじめて用いた金属とは金であったのではないかと考えられている(銀の融点が961℃しかし還元、精錬が必要)。

また、純金であれば、その表面に酸化膜が生じないことから、たとえば、金箔の上に別の金箔を被せ、圧接すると、それは熱を加えずとも一体化する(粘土のように)といったことが生じる(一種の冷間加工が可能)。

さらに、この金の性質を生かし、う蝕部を除去した歯の窩洞部位に、金箔を積層、充填していく治療法(金箔充填)がかつては一般的に行われていた。

【以下暫時教科書よりの抜粋引用】
医歯薬出版社刊 『要説 歯科材料学』P.68
ISBN-10: 4263454499
ISBN-13: 978-4263454497

『2枚の純金を重ねて圧接すると、その接触点で金属結合が形成され、Auは熱を加えないでも鍛接される。純金充填物(pure gold filling)を築造するときに、この冷間鍛接性(cold welding)が利用される。2枚のAuの表面は密着するように完全に清浄にしておかなければならない。また加える力は、金属結合を形成するように十分に大きくなければならない。
凝着性金(cohesive gold)は一般に厚さ約0.001㎜の非常に薄い純金の板、すなわち箔(gold foil)の形で使用する。窩洞に充填するさいに、1枚1枚の箔が、すでに充填されている箔に鍛接されることになる。吸着したグリースやガスがあると鍛接の妨げになるので、これを除去するために、一般に金箔を使用する前に電気炉かガス炎で約250℃に加熱する。充填中の汚染を避けるために、充填する歯を唾液に触れないようにし、十分に乾燥させておかなければならない。』

とはいえ、この金属としては加工し易い、柔らかな性質を持つ金とは、窩洞部における金箔充填といった場合であれば、特に問題はないのかもしれないが、咬合などが関与する、ある程度の機械的強度が要求される部位の歯科治療を行うに際の材料としては不都合であると云える。

そのため、金の持つ優れた諸性質をできるだけ生かしつつ、その機械的強度を高める工夫が為された。

その工夫とは合金化そして熱処理であるが、それらについては次回の記事に記す。

今回もまたここまで読んで頂きどうもありがとうございます。
昨年より現在に至るまで列島各地にて生じた一連の地震・大雨・水害等の大規模自然災害により被害を被った諸地域のインフラの復旧、回復および復興を祈念しています。

昨今より再び噴火をはじめた新燃岳周辺の方々の御無事も祈念しています。

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