B「どうも、そういえば先日の「ゆきゆきて神軍」観ましたよ。」
A「はあ、どうでしたか?」
B「ええ、仰る通りかなりショッキングな内容でした。
20代に観ていたらもう少しショックを受けていたかもしれません。しかし、当時実際にあんなことはあったんですかね?」
A「一応ほぼノンフィクションらしいです。
それにあの迫力は素人が演技でできるものではなく本物の迫力だと思いますよ。
あと別の南方戦線、確かフィリピンを舞台にした大岡昇平原作小説の映画で「野火」というのも似たようなテーマを扱っています。確かあれは最近リメイクされたらしいですよ。
あと、それとは別に同著者の従軍経験を扱ったもので「俘虜記」がありますが、あれはかなり秀逸だと思います。
あとはアメリカ側からの視点でこれまた別の南方戦線、ガダルカナル島の戦いを描いた映画で「シン・レッド・ライン」がありますがあれも何だか考えさせる不思議な映画でした。
それと最近のものでしたら「ザ・パシフィック」というシリーズものがありましたね。
原作は確かユージーン・スレッジという人が書いた「ペリリュー・沖縄戦記」で、これは講談社学術文庫から邦訳が刊行されいています。
数年前に読みましたが「アメリカ軍兵士から見た太平洋戦争はこういう感じだったんだろうな。」と思いました。
B「そうですか、また機会がありましたら是非・・。
あと、最近巨人が人間を襲うという内容の漫画を原作にした映画が上映されるらしいですね。
ああいうのも何かしら世相を映しているんでしょうかね?」
A「ああ、ポスターとかは街で見かけます。
それでああいった巨人ものはウルトラマンの怪獣、ジブリアニメに出てきた巨神兵、そして前世紀末に大ヒットして現在も人気があるあのアニメに出てきた使徒なんかがその原型にあるのではないでしょうか?
よくはわかりませんが・・。」
B「なるほど、巨神兵は確かに似ているかもしれません。
しかし、ああいう巨人の怖さというのは圧倒的な破壊力を持ち、人間に形は似ているけれど意思が通じないということです。しかし、そうなると、それはゾンビ、ミイラ男、フランケンシュタインなどにも共通する要素であるかもしれませんね。」
A「なるほど、それは確かにそうですね。あと、それでしたらゴーレムもそうかもしれません。あれは確か元々土人形で呪文によって生命、魂を得て動くのだそうです。
そしてそれを工業社会における有用性にて抽象したものが鉄人28号であり、おどろおどろしい古代的要素にて抽象したものが大魔神であるかもしれませんね。」
B「はあ、なるほど、そういえばAさん古墳時代詳しかったですよね?」
A「いや、そこまででもないですが、少しなら分かると思いますが・・。」
B「あの大魔神は日本の神話やら伝承がベースにあるのですか?それがちょっと気になりましてね・・御存知でしたらお聞きしたいなと思いました。」
A「ああ、それでしたら確証はないですけれど、あの大魔神の甲冑の形は多分東日本、関東のものです。
それに加えて持っている刀は蕨手刀というもので比較的短寸で柄の形状が特徴的なものです。そしてそれも主に東日本、関東において特徴的なものです。
ですからあの形状に忠実に考証してゆくと自然と東日本がその舞台になると思います。
しかし、大魔神は確か形は本来焼き物である埴輪ですが、あれは石像ですよね。
そうなると、それと酷似したものは東日本をはじめ国内外では見当たりません。
一方、大魔神をより一層抽象化した様な、つまり外見上あまり似ていない石造の武人像等は九州北部、山陰東部などで発見されています。
ですから大魔神の持つ要素全てを兼ね備える埴輪、石像が存在する地域とは国内および海外にもありません。
そのことから、多分大魔神はたくさんのウルトラマンの怪獣が創られた同時期に創造されたキャラクターではないかなと考えます。」
B「はあ、なるほどです。大体事情はわかりました。それでしたら大魔神はもう少し形を変えれば九州北部あたりを舞台にしてもおかしくないのですか・・?」
A「ええ、具体的には福岡県南部、熊本県あと大分県それに鳥取県あたりでしたら大丈夫ではないかと思います。
しかし、それでしたら大分県、宮崎県、鹿児島県の仁王像も良いモチーフになると思います。
ああ!あと今思い出しましたが、大隅北部の方で見られる大人弥五郎どんは大魔神のキャラクターと、かなり被るのではないかと思いますけれども・・?」
B「弥五郎どん?というのがあるのですか・・?。」
A「そうです。私も詳しいことは勉強不足でよくはわかりませんが、確か11月の頭に大隅北部の数箇所で、いかめしい顔で刀を差し竹の骨組みで着物を着た大きな人形が街中を廻る祭りです。
いやあ、これはもう少し勉強しておけば良かったのです。
ともあれ、確かこれは古代隼人を抽象化したキャラクターだということです。
それは隼人らしく古代朝廷に対する反骨精神の表れであるのか?
あるいは朝廷からの指示、あるいは今のゆるキャラの様に当時の流行により、そういうキャラクターが創造され祭りとなったのかはわかりません。
しかし何れにせよ私は大魔神と弥五郎どんはかなり被るのではないかと考えます。
ですから、よりリアルな伝承、伝説に基づいた巨人の映画を作るのでしたらこれこそ格好のキャラクターではないかと思います。」
B「そうですか・・いえ、今の時代に古代的な文化装束のゆるキャラっぽくない巨大な存在が何かの拍子に目覚めて動き出し、堕落した文化全般、組織等に鉄拳制裁を加えるなんていうのがあったら面白そうかな・・などと思いましてね。」
A「はあ、何だか物騒な話ですね・・それとも最近モーツァルトのドン・ジョバンニでも観ましたか?」
B「いえ、特にそういった含みはありません。
しかし今、ドン・ジョバンニを出されたのは面白いですね。
あれは確か映画アマデウスでもそういったシーンがありましたが、そう云われると今現在ああいう巨人ものが流行しているのは、同じ様な背景があるのかもしれませんね・・。
A「同じ様な背景とは何ですか?」
B「つまり何と云いますか、強烈な父権あるいは否定できない伝統的且つ男性的な権威とでも云いましょうか、つまり現代、いや戦後の日本社会全体が徐々に喪失した要素であり、また現在の学生を含む若者世代全般が対決を挑む対象みたいなものではないでしょうか・・?そういった要素は多分我々の世代と較べても彼等は消毒されている反面、欺瞞的、なし崩し的なルートを知らぬ間に歩まされている気がするのです。・・まあ観念的な話ですが・・。」
A「うーんそれは私にはよく分かりませんが、Bさんが仰るのでしたらそういった一面はたしかにあるのかもしれませんね。しかしそういったものはその構造をすぐにどうにか改変できる類でもないと思いますけれどもね・・。」
B「ええ、それは私も十分分かっているつもりですので、つい怪力乱神に頼り、先ほどの大魔神の話に興味を示した次第です。しかしまあ少なくともそういったことを考えるきっかけにはなるかもしれないと思いますが・・。」
A「ああ、なるほどです。」
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