専門学校・短期大学の特徴
専門学校や短期大学は、修学期間が3年間と比較的短いため、速やかに資格を取得して歯科臨床の現場で活躍したい人に適していると云えます。これら養成機関では、実践的な技能や知識の習得に重点が置かれ、即戦力としての歯科衛生士を育成することを主な目的としています。学費は養成機関によって異なりますが、3年間での総額は約300万~400万円程度が目安と云えます。また、多くの養成機関では、奨学金制度や学費減免制度を利用することも可能であり、経済的負担を軽減する選択肢も用意されています。
4年制大学の特徴
一方、4年制大学では、総じて、より専門的かつ幅広い学びの機会が提供されます。4年制の「歯科衛生士学科」や「口腔保健学科」などの学科では、歯科医療のみならず、福祉、公衆衛生、予防歯科などの関連分野の知識を深めることが可能です。そして、研究活動や大学院進学といった、さらなる学問的探求への選択肢も広がり、歯科医療以外の分野に進むことも視野に入ってきます。学費はさきと同様、養成機関によって異なりますが、4年間での総額は私立大学の場合、約500万~600万円程度と専門学校より総じて高額と云えます。しかしながら、4年間で得られる知識や経験は非常に価値が高く、そのため、4年制大学の養成機関を卒業した歯科衛生士は、より高度な専門知識を活用して、歯科医療分野のみならず、公衆衛生や教育、研究、行政などといった多様な分野に進むことも充分に可能と云えます。
歯科衛生士養成課程を擁する4年制大学
以下に、日本国内の主要な4年制大学を紹介します。また、それぞれの大学の特色や魅力、そして学費などの情報や学科URLも記載しました。
新潟大学(新潟県)
「歯学部 口腔生命福祉学科」は、歯科衛生士と社会福祉士の双方資格を取得可能な全国初の学科として設置されました。この学科では、口腔保健医療と福祉とを総合的に学び、地域社会に貢献できる専門職業人の育成を目指しています。また、4年間の教育課程では、1年次に教養科目を履修し、歯科医療の基礎知識を習得し、2年次以降は専門科目に進み、口腔保健や福祉について学びつつ、臨床実習や学外実習を通じて実践力を磨きます。そして最終年には、医療や福祉の現場での実習を重ね、調査研究を行いその成果を論文にまとめます。卒業時には、歯科衛生士と社会福祉士の国家試験受験資格が得られ、行政機関や医療施設、介護福祉分野など幅広い領域での活躍が期待されます。
学費: 初年度約82万円、4年間で約242万円
学科HP: 新潟大学 歯学部 口腔生命福祉学科
埼玉県立大学(埼玉県)
「健康開発学科 口腔保健科学専攻」では、歯科衛生士の国家資格取得を目指す学生に対し、質の高い教育を提供しています。この専攻では、歯科診療の補助、予防処置、保健指導など、歯科衛生士として必要な幅広い知識と技術を習得します。さらに、選択科目の履修により、養護教諭一種免許状の取得も可能であり、学校歯科保健に強い養護教諭の育成にも力を入れています。また、多職種連携も重視しており、看護師や理学療法士、作業療法士など、他の医療・福祉職との協働を推進する能力を養成します。これにより、学生は多職種連携の重要性を理解し、実践的なスキルを身につけることができます。カリキュラムは、口腔疾患の理解と口腔保健活動に関する科目を中心に構成されており、臨地・臨床実習では、歯科診療施設や小学校、障害者施設など、多様な機関での実習を通じて実践能力の向上を図ります。これらの教育を通じて、口腔から全身の健康を推進するプロフェッショナルとしての歯科衛生士を育成しています。
学費: 初年度約83~104万円、4年間で約270~290万円
学科HP: 埼玉県立大学 健康開発学科 口腔保健科学専攻
東京科学大学(旧東京医科歯科大学)(東京都)
「歯学部 口腔保健衛生学専攻」では、4年制の歯科衛生士養成課程を擁し、この専攻では、保健医療や福祉分野と密接に連携して、口腔保健活動を展開できる能力を持つ歯科衛生士の育成に注力しています。また同時に、口腔保健分野の未来を担う研究者の育成も目指しています。そして、多職種連携教育や健康教育の企画と実践を通じ、医療を中心としたさまざまな分野において活躍できる人材を育成することに重点を置いています。
学費: 初年度約92万円、4年間で約285万円
学科HP: 東京科学大学 歯学部 口腔保健衛生学専攻
千葉県立保健医療大学(千葉県)
「歯科衛生学科」では、口腔保健の専門家として地域医療に貢献できる人材の育成を目指しています。最新の設備を備えた歯科診療室での実習を通じて、実践的な技術と知識を習得することができます。また、多職種連携を重視したカリキュラムにより、総合的な医療提供能力を養います。卒業生は高い就職率を誇り、県内外の医療機関や教育機関で活躍しています。
学費: 初年度約82~96万円、4年間で約240~260万円
学科HP: 千葉県立保健医療大学 歯科衛生学科
明海大学(千葉県)
「保健医療学部 口腔保健学科」は、東日本の私立大学で初めて設置された4年制の歯科衛生士養成課程です。この学科では、歯学部付属病院などの関連施設での臨床実習を通じて、幅広い研修機会を提供しています。また、語学教育やキャリア形成教育、他学部との連携カリキュラムを取り入れて質の高い教育を実施しています。卒業後は、歯科診療所だけでなく、総合病院や介護保険施設、行政機関、企業、教育・研究機関など、多岐にわたる進路が開かれています。さらに、在宅医療や介護の場で重要視される口腔の健康に対応するため、摂食嚥下リハビリテーションや専門的口腔健康管理の教育も行っています。
学費: 年間約140万円、4年間で約490万円
学科HP: 明海大学 保健医療学部 口腔保健学科
大阪歯科大学(大阪府)
「医療保健学部 口腔保健学科」では、歯学部教授陣による講義や附属病院での豊富な臨床実習を通じて、国家資格水準以上の知識と技能を身につけることができます。カリキュラムは1~2年次に口腔および医療全般の基礎を学び、2~3年次には実際の病院設備や材料を用いた実習を行います。3~4年次には、附属病院の各診療科で多様な症例に触れることで、実践的な経験を積むことができます。また、思考力や判断力の育成にも注力しており、総合病院や医療関連企業など、歯科医院以外への就職も視野に入れた教育を提供しています。さらに同学科の歯科衛生士国家試験合格率は、近年4年連続で100%を達成しており、就職率にも高い実績を誇ります。
学費: 初年度約160万円、4年間で約570万円
学科HP: 大阪歯科大学 医療保健学部
梅花女子大学(大阪府)
「口腔保健学科」では、歯科衛生士の国家資格取得を目指す学生に対し、充実したカリキュラムを提供しています。専門科目では、口腔ケアに必要な高度な知識と技術を修得し、実践力と柔軟な対応力を養います。また、最新の設備を備えた実習環境でのトレーニングを通じて、即戦力となるスキルを身につけることができます。さらに、女性の視点を活かしたケアの提供を重視し、患者さん一人ひとりに寄り添った対応力を育成します。卒業後は、歯科医院や病院、保健所、教育機関など、多岐にわたるフィールドでの活躍が期待されます。
学費: 初年度約160万円、4年間で約617万円
学科HP: 梅花女子大学 口腔保健学科
広島大学(広島県)
「歯学部口腔保健学専攻」では、養護教諭一種免許状の取得も可能です。学生は教養教育を通じて医療人としての基盤を築き、多職種連携教育や歯学部合同授業を通じて幅広い専門知識を修得します。3年次後期からは、広島大学病院や学外実習施設での臨床・臨地実習が行われ、在学中には海外研修の機会も多く設けられています。卒業後は、全国各地の病院や診療所での勤務、企業や行政での活躍、大学院への進学など、多様な進路が開かれています。また、口腔保健分野の教員や養護教諭、研究者としての道も選択可能です。取得可能な資格として、歯科衛生士国家試験受験資格と養護教諭一種免許状があります。主な就職先は、歯科医院、大学病院、歯科関連企業、公務員、大学教員、養護教諭など、多岐にわたります。
学費: 初年度約82万円、4年間で約242万円
学科HP: 広島大学 歯学部 口腔保健学専攻
徳島大学(徳島県)
「歯学部口腔保健学科」では、21世紀の多様なニーズに応える高度な歯科医療従事者の養成を目的としています。地域に密着した医療・保健・福祉の連携によるチームケアを、他の関連職種と協力して進めるための専門知識と技術を身につけた人材を育成します。教育課程では、乳幼児期からの継続的な口腔疾患予防のためのケアと健康教育を重視し、社会福祉関連の科目を充実させています。これにより、幅広い領域の知識と視野を持ち、問題解決型の思考力と実行力を備えた人材育成を目指しています。また、医療従事者に求められる社会的責任感や倫理観、患者との的確な意思疎通能力、人間の尊厳を理解する豊かな感性を育成する教育も行っています。さらに、科学技術の進展に柔軟に対応し、生涯学習への意欲を育むための基礎教育も提供しています。具体的な科目として、衛生行政、歯科診療補助論、チーム歯科医療学、嚥下・摂食障害学、障害者福祉論などが開設されています。これらの科目を通じて、学生は多職種連携や高齢者・障害者の口腔保健衛生に関する知識と技術を習得します。
学費: 初年度約82万円、4年間で約242万円
学科HP: 徳島大学 歯学部 口腔保健学科
徳島文理大学(徳島県)
「口腔保健学科」では、4年制の教育プログラムを通じ、専門性の高い歯科衛生士を養成しています。学生は、歯科予防処置、歯科診療の補助、歯科保健指導の3大業務を中心に、専門分野や基礎分野を学びます。1年次から豊富な実習を経験し、最新の歯科診療ユニットや検査機器を備えた施設で臨床スキルを磨きます。教員は歯科医師や歯科衛生士としての豊富な経験を持ち、学生一人ひとりに親身な指導を行います。卒業後は、歯科クリニックだけでなく、大学病院や総合病院、保健所など多彩な現場での活躍が期待されます。また、歯科衛生士国家試験の全員合格を目指し、早期から国家試験対策を開始しています。学科独自の奨学金制度も設けられており、学生生活のサポート体制も充実しています。
学費: 初年度約167万円、4年間で約580万円
学科HP: 徳島文理大学 口腔保健学科
九州歯科大学(福岡県)
「口腔保健学科」では、歯科医療の基礎から高度な専門知識・技術までを体系的に学ぶことができます。カリキュラムは、基礎医学系科目や臨床系科目、さらに九州歯科大学附属病院や外部の医療施設での臨床実習を含み、実践的な教育が充実しています。また、歯学科との合同実習や多職種連携教育を通じて、チーム医療の重要性を理解し、全人的な歯科医療を提供できる人材の育成を目指しています。
学費: 初年度約80~100万円、4年間で約240~270万円
学科HP: 九州歯科大学
九州看護福祉大学(熊本県)
「口腔保健学科」では、保健・医療・福祉の視点から健康を総合的に捉え、ヒューマンケアを実践できる歯科衛生士の育成を目指しています。この学科では、ライフステージやコミュニティごとに異なる口腔保健のニーズに応える専門職を育てることを重視しています。また、カリキュラムは、基礎科目から臨床実習まで幅広く編成されており、3年次には歯科診療所や病院での臨床実習を行います。また、保育所や幼稚園、障がい児・者施設、高齢者施設などでの発達支援実習を通じて、多様な現場での実践力を養います。これにより、専門的な技術だけでなく、患者一人ひとりに合わせたケアの提供方法を学びます。この学科では、歯科衛生士国家試験の受験資格が得られるほか、履修条件を満たすことで養護教諭一種免許状も取得可能です。これにより、医療機関だけでなく、教育現場や地域保健の分野でも活躍の場が広がります。国家試験全員合格を目指し、早期からの試験対策も充実しています。
学費: 初年度約112万円、4年間で約380万円
学科HP: 九州看護福祉大学 口腔保健学科
自分に合った進路を見つけるために
冒頭においても述べましたが、進学先を選ぶ際は、自分の将来像に合った学びが得られる大学を選ぶことが重要です。各大学の公式ウェブサイトやオープンキャンパスを活用して情報を収集し、自分にとって最適な選択をしましょう。そして、4年制大学での歯科衛生士となるための学びが、多様なキャリアの可能性を広げる貴重な機会となることを願っています。