現在では、国内に4年制の歯科技工士養成課程を有する大学が2つあり、広島大学が2005年、東京科学大学(旧・東京医科歯科大学)が2011年に、それぞれ設置されています。それ故、私が博士号を取得した2013年当時、仮に最初の学士課程の入学生が順調に進学されていたとしても、博士課程3年目にあたる段階であり、修了には至っていなかったと見込まれます。つまり、その時点で修士課程を経て課程博士を修了した歯科技工士の事例はほとんど存在せず、私の修了は、ごく初期、あるいは日本初であった可能性もあると考えています。
キャリアパスが整備される以前に、異分野の修士課程を経て、歯科技工士として進学が妥当と云える歯学分野の博士課程に進み、どうにか修了にまで至ったことは、巨視的に見れば、我が国の歯科技工士教育と歯学分野の学術研究とを結節する、ごく初期の試みであったと云えます。
現在では、4年制大学での課程を卒業された歯科技工士の方々が、大学院修士課程、さらに博士課程へと進学する事例も聞かれます。そうした整備された道を歩まれてきた方々と比べますと、私などはまるで、黎明期の試作機、あるいは不格好な多砲塔戦車のような存在と云えるかもしれません(苦笑)。しかし、そうした時期であったからこそ、特有の創意や自由闊達さもまたあったのではないかと思われます。
とはいえ、その過程には以前にも述べました通り、さまざまな困難があり、決して順風満帆なものではありませんでした。そうしたなか、2012年、教授(師匠)も准教授の先生もおられない状況で、担当させていただいた鋳造および鑞付けの歯科理工学実習では、研究室の先生方からご許可を頂き、人文的な話題を随所に交えながら実習を進めることができましたが、これは余程、自分の性質に合致していたのか「それまでの人生がこのためにあったのだ!」と感じられるほどの経験であり、それだけに、今なお強く記憶に残っています。
それでも、学位取得後の道のりもまた、決して平坦なものではなく、まさに紆余曲折を経るものでした。黎明期の人間として、その不完全さなどネガティブな面全てを含めて、まあ自分らしい経路であったのではないかと思われるところですが、今後は、これまで培った経験を活かしつつ、若い世代の医療専門職の方々が、より自然に人文書に興味を持ったり、臨床と研究とを往還出来るような環境の整備に微力ながら関わりたいと考えています。
今回もまた、ここまでお読みいただき、どうもありがとうございます。
ISBN978-4-263-46420-5
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