pp.169-172より抜粋
ISBN-10 : 4121601610
ISBN-13 : 978-4121601612
こうして、不確定な将来のうちに、少なくとも確かなことが一つある。ここでは国民(という有機体)の生命を問題にしているから(時間の単位が長い。その単位で考えれば)わりあい近い時期に、イギリス系アメリカ人は、彼らだけで北極の氷原と熱帯との間の広大な空間をおおうであろう。大西洋の砂浜から南の海辺までひろがるであろう。イギリス系アメリカ人の人種がひろがっていく地域は、ヨーロッパの四分の三に等しくなると思う。連邦の気候は、全体として、ヨーロッパよりよく、天然の利に多く恵まれている点では同等えある。人口の比率も、その時には、われわれと明らかに均衡するにちがいない。ヨーロッパは数多くの国民に分かれ、絶えず起り来る戦争と中世の暗黒とを経て。今日一平方マイル四一〇人の密度をもつに至っている。
幾世紀もたてば、アメリカのイギリス人の子孫が種々に分かれて、共通の相貌を示さなくなるであろう。しかし、新世界に諸階層の恒久的な不平等が樹立される時期を予見することはできない。平和か戦争か、自由か圧制か、繁栄か貧困かによって、イギリス系アメリカ人という大家族の種々の末裔がの運命にいかなる相違が生じようと、少なくとも、現在に似た社会状態が維持され、そこから流れ出る慣行と理念とを共有するであろう。
宗教という絆だけで、中世においてヨーロッパにいた諸種族を同一の文明に結び合わせるに足りた。新世界のイギリス人はその他に数多くの紐帯をもっており、すべての人が人間の平等を求める世紀に生きている。中世は分裂の時代であった。各国民、各地方、各都市は強く個別化する傾向になった。今日、反対の動きが感じられ、諸国民は統一に向かって進むように見える。知的な紐帯は最も遠隔の地方をも結ぶ。人々は、一日たりとも、お互いが見ず知らずではありえないし、世界のどんな片隅に起こる事件も知らずにはいられない。また、今日、ヨーロッパの人々と新世界にいる彼らの子孫との間には、たとえ大洋によって隔てられていようとも、川でした隔てられていなかった十八世紀の都市の間(の相違)よりも差が見られない。この同化の連動が国を異にする人々ろ近づけるとすれば、まして同じ国民の末裔がお互い見ず知らずになることがあろうか。
ゆえに、北アメリカの人口が一億五千万人を数える日が来、そのすべてが相互に平等で、同一の家族に属するごとく、起点を同じくし、同一の文明、言語、宗教、慣習、習俗をもっているという状態が現出するだろう。またそのとき思想は同一の形式で流布し、同一の色彩に彩られるであろう。他のことはすべて疑わしいとしても、これだけは確実である。そして、これこそ世界の全く新しい事実である。想像をいかにはたらかせても、その意義を把握するlことはできないであろう。
今日、地(球)上に二大国民があり、出発点を異にしながら、同一の目的に向かって進んでいる。それはロシア人とイギリス系アメリカ人とである。二国民とも知らぬ間に大きくなった。人々の眼がよそにひかれている間に、突如として諸国民の頂きに位し、世界がその生誕と強大さとを知ったのは、ほとんど同時であった。
他のすべての国民は、自然の定めた限界にほとんど到達し、もはや現状を維持するほかないと見えるが、この両者は成長の途上にある。他のすべては成長がとまるか、力をふりしぼってしか前進できないのに、彼らだけがやすやすと、しかも急速に、その途を進む。この途の限界は誰の眼にもいまだわからないであろう。
アメリカ人は自然の課した障碍と闘い、ロシア人は人間と争っている。一つは広野と未開と闘い、他はすべての武器を身につけた文明と闘う。また、アメリカ人の征服は働くものの鍬によって行われるが、ロシア人は兵士の剣で征服する。その目的を達するのに、前者は個人利益にもとづく、個人の力と理性とを自由に活動させ、これを統制はしない。後者はすべての権力を、いわば一人に集中する。一つは自由を行為の主要な手段とし、他は隷従をとる。その起点は異なり、とる途は違うが、それでも、おのおの、秘められた天意により、いつの日かその手に世界の半分の運命を握るべく召されているかに見える。
ISBN-10 : 4121601610
ISBN-13 : 978-4121601612
こうして、不確定な将来のうちに、少なくとも確かなことが一つある。ここでは国民(という有機体)の生命を問題にしているから(時間の単位が長い。その単位で考えれば)わりあい近い時期に、イギリス系アメリカ人は、彼らだけで北極の氷原と熱帯との間の広大な空間をおおうであろう。大西洋の砂浜から南の海辺までひろがるであろう。イギリス系アメリカ人の人種がひろがっていく地域は、ヨーロッパの四分の三に等しくなると思う。連邦の気候は、全体として、ヨーロッパよりよく、天然の利に多く恵まれている点では同等えある。人口の比率も、その時には、われわれと明らかに均衡するにちがいない。ヨーロッパは数多くの国民に分かれ、絶えず起り来る戦争と中世の暗黒とを経て。今日一平方マイル四一〇人の密度をもつに至っている。
幾世紀もたてば、アメリカのイギリス人の子孫が種々に分かれて、共通の相貌を示さなくなるであろう。しかし、新世界に諸階層の恒久的な不平等が樹立される時期を予見することはできない。平和か戦争か、自由か圧制か、繁栄か貧困かによって、イギリス系アメリカ人という大家族の種々の末裔がの運命にいかなる相違が生じようと、少なくとも、現在に似た社会状態が維持され、そこから流れ出る慣行と理念とを共有するであろう。
宗教という絆だけで、中世においてヨーロッパにいた諸種族を同一の文明に結び合わせるに足りた。新世界のイギリス人はその他に数多くの紐帯をもっており、すべての人が人間の平等を求める世紀に生きている。中世は分裂の時代であった。各国民、各地方、各都市は強く個別化する傾向になった。今日、反対の動きが感じられ、諸国民は統一に向かって進むように見える。知的な紐帯は最も遠隔の地方をも結ぶ。人々は、一日たりとも、お互いが見ず知らずではありえないし、世界のどんな片隅に起こる事件も知らずにはいられない。また、今日、ヨーロッパの人々と新世界にいる彼らの子孫との間には、たとえ大洋によって隔てられていようとも、川でした隔てられていなかった十八世紀の都市の間(の相違)よりも差が見られない。この同化の連動が国を異にする人々ろ近づけるとすれば、まして同じ国民の末裔がお互い見ず知らずになることがあろうか。
ゆえに、北アメリカの人口が一億五千万人を数える日が来、そのすべてが相互に平等で、同一の家族に属するごとく、起点を同じくし、同一の文明、言語、宗教、慣習、習俗をもっているという状態が現出するだろう。またそのとき思想は同一の形式で流布し、同一の色彩に彩られるであろう。他のことはすべて疑わしいとしても、これだけは確実である。そして、これこそ世界の全く新しい事実である。想像をいかにはたらかせても、その意義を把握するlことはできないであろう。
今日、地(球)上に二大国民があり、出発点を異にしながら、同一の目的に向かって進んでいる。それはロシア人とイギリス系アメリカ人とである。二国民とも知らぬ間に大きくなった。人々の眼がよそにひかれている間に、突如として諸国民の頂きに位し、世界がその生誕と強大さとを知ったのは、ほとんど同時であった。
他のすべての国民は、自然の定めた限界にほとんど到達し、もはや現状を維持するほかないと見えるが、この両者は成長の途上にある。他のすべては成長がとまるか、力をふりしぼってしか前進できないのに、彼らだけがやすやすと、しかも急速に、その途を進む。この途の限界は誰の眼にもいまだわからないであろう。
アメリカ人は自然の課した障碍と闘い、ロシア人は人間と争っている。一つは広野と未開と闘い、他はすべての武器を身につけた文明と闘う。また、アメリカ人の征服は働くものの鍬によって行われるが、ロシア人は兵士の剣で征服する。その目的を達するのに、前者は個人利益にもとづく、個人の力と理性とを自由に活動させ、これを統制はしない。後者はすべての権力を、いわば一人に集中する。一つは自由を行為の主要な手段とし、他は隷従をとる。その起点は異なり、とる途は違うが、それでも、おのおの、秘められた天意により、いつの日かその手に世界の半分の運命を握るべく召されているかに見える。
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