単純に時代が変り、風景の構成要素も変ったのだと思いますが、どうもこうした感覚をおぼえると自分の年齢、年代などを意識してしまいますね・・まだ、そんな年ではないはずなのですが(苦笑)。」
B「ええ、ああいった映画でも自分が実際に経験したものに近いと、その風景の空気の香りなど色々な要素が想像できて、そこから映画の内容に入り込み易くなりますよね・・。
私もその作品は幼い頃に観ましたが、当時の私にとっては、ほとんどホラー映画でしたね(笑)。」
A「それは私も同じ経験を持っております。
しかし、そういわれますと邦画のホラーは、洋画のそれに比べ、まだ面白いというか怖いと感じるものが多いような気がします。
そうしますと、恐怖という感情とは、もしかしたら、文化の東西で違い、そのことから我々はやはり日本人であることを自覚するのかもしれませんね・・。
ちなみに私が邦画で「これは怖い」と感じたのは前世紀末に制作された「女優霊」という映画でしたが、これは今観ても多分かなり怖いと感じると思います・・。
洋画でしたら、スティーブン・キング原作でスタンリー・キューブリック監督の「シャイニング」という作品が怖かったですが、この怖さはどちらかというと邦画のそれに近いのではないかと思います。
加えて、この映画作品に描かれる周囲の環境により主人公が徐々に狂気に陥っていく過程とは、シェイクスピアの「マクベス」にも通じる要素があるのではないかと思います・・。
また、そのように考えますと、この「マクベス」を原作とした黒澤明監督の「蜘蛛巣城」も時代劇ではありますが、同時に一種のホラー映画としても見ることができるのではないかと思います。」
B「・・ううむ、たしかにホラー映画に関しては私もまだ邦画の方を支持しますね。
その「女優霊」はまだ観たことがありませんが、たしか「リング」と同じ監督で、その出世作といわれるものではなかったですか?
また、映画「シャイニング」と「マクベス」あるいは「蜘蛛巣城」の間における恐怖の質の類似性とはなかなか面白い指摘ですね・・。
それらは実際誰にでも生じる可能性があるという意味で説得力があり、また、どれも物語冒頭においては主人公は謹厳実直、真面目なキャラクターとして描かれているのですが、それが徐々に狂気に陥ってゆく過程、そしてその先にある悲劇がこれらに描かれる恐怖の本質なのではないでしょうか?
しかし、そう考えてみますと、こうした悲劇性および恐怖の質とは、文化の東西を問わず古代神話の時代から受け継がれているものではないかなあ・・?」
A「・・・たしかにそうですね。
では、これらの恐怖の本質とは案外普遍性があるのかもしれませんね・・。
そうしますと、我々が感じる恐怖の感情における東西文化の相違とは、気のせいであるのかもしれません・・。
いや、しかしホラー映画におけるそれを考えてみますと、やはり邦画、洋画間に何かしら違いがあるのではないかとも思えますが・・。」
B「ううん、それは全般的に恐怖を感じさせる要素が観客にとって明示的であるか暗示的であるかといった違いではないでしょうかね・・?
邦画ホラーにおいては心霊、幽霊などの存在は暗示的であることが多く、それに対し洋画ホラーにおいてはジョーズや様々なモンスターと同様、その存在が明示的というか具体的存在が強調されるものが多いのではないかな。」
A「・・なるほど、そしてそう考えますと前に示した「シャイニング」、「マクベス」そして「蜘蛛巣城」における恐怖の質とは概ね暗示的であり、その意味において日本の伝統的な怪談に近い要素があるのかもしれません。
しかし一方において、そういった暗示的な恐怖とは、少なくとも洋画ホラーにおいては、主流ではなく、あるいは多く見受けることが出来ず、逆に邦画ホラーにおいては、概ね主流であるといっても良いということになるのでしょうか?」
A「・・たしかにそうであるかもしれないね。
そして、そう考えるとたしかにホラー映画のおける東西文化の相違はあるのかもしれませんね。
具体的には、日本のそれは何というか、より運命的、不可避なものであり、それに対し欧米のそれはまだ選択の余地、冒険的な要素があり、時にはハッピーエンドになることもあるけれど、そういったことがあるのではないかな?
そのように考えると、映画におけるホラー、恐怖の定義自体が多分、若干東西文化で違うのではないかと思えますね・・。」
B「そうしますと、邦画ホラーとは意識、無意識を問わず、伝統的な怪談からの系譜を引くものであり、それに対し洋画ホラーの系譜とは、少なくとも我々のそれとは当然ながら異なり、そうではあるものの時には類似したような恐怖を持つ作品もある。
といったところでしょうかね?」
A「ええ、とりあえずそんなところではないでしょうか。
また、そう考えると洋画ホラーの根底に流れる諸文化およびその構成要素の比率、特徴などを検討してみるのもなかなか面白い研究であるかもかもしれませんね(笑)。」
B「多分、その専門家は既にいるとは思いますが、たしかにそれは面白そうですね・・。
今の私にはその任は多少重いですが、今後必要性が生じたらやってみたいとも思いますね・・。
また、その際にここでAさんとの会話の検証をまた行うことが出来るとも思います。」
A「そうですね、まあ機会があったら是非やってみてください。
そうしたらまた、そのネタで話してみましょう。」
現在大変困難な状況でありますので、この状況から助けていただきたく思います。
どうぞよろしくお願いします。
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