2025年7月6日日曜日

20250705「日本文学史序説」との出会いについて②

 先月、6/15の投稿記事にて「自由な立ち読み的読書が、個人・社会の双方において創造性の活性化に何らかの良い効果をもたらすのではないか?」という見解を述べましたが、今回はこの見解と、その次、6/18の投稿記事「『日本文学史序説』との出会いについて①」を統合し、さらに、その続きを述べたいと考えます。
 繰りかえしにはなりますが、当著作を購入したのは鹿児島に在住していた2012年であり、そして実際に読み始めたのは、翌2013年の秋、学位を取得して帰郷後のことでした。目標であった学位取得は叶ったものの、すぐには就職が決まらず、さらに求職活動が長期化する可能性も現実的なものになってきた頃「これまでのように専門分野の論文や学術書ばかりを読んでいても、どうにもならないのでは?」と考えるようになり、そうした中、過日購入して積読状態となっていた当著作を手に取り読んでみたところ、大変面白く、強く惹かれて、自然と自分なりに精読をするようになっていました。
 現在、振り返ってみますと、これは一種の「開き直り」であったと思われます。それでも、こうして、自らの「専門性」という(思い込みの)枠組みから一旦離れ、棚上げ状態であった以前から興味関心を抱いていた分野の著作を読み進めることは、やはり楽しいものであり、さらに、書籍の読み方が、以前よりも多少深化しているように感じられたことは、あるいは錯覚であったのかもしれませんが、その後、約2年経過して始めた当ブログへと繋がるものがあったと思われます。
 これをもう少し詳説してみますと、多少の苦労を経て、どうにか獲得した制度に基づく専門性と、それまで、棚上げ状態であった内発的な興味・関心を持つ分野での読書が結びついて生じた感覚の変化は、やがて自らの考えにも影響をおよぼし、やがて「読む」ことと「思索する」ことの間の距離が次第に近づき、やがて、両者一体となって駆動し始めるような感覚が生じるのです。
 こうした経緯で感覚が駆動し始めますと、それまで断片的であった知識や経験といった「記憶」が、機に応じて統合され、そして文脈を持ち、再構成されていくようになります。   また、ここでいう「駆動」とは、外から与えられた刺激に反応するといったものではなく、内に蓄積されたものが、ある点に至り、自然と動き出すような自発的且つ持続的なものであると考えます。そして、このような内面での駆動感がしばらく続きますと、次第に「自分で文章を作成したい」という欲求が、ごく自然に生じてきました。
 あるいは、これを異言しますと、この感覚の駆動の内容を、他者に向け、あるいは自分自身のために言語として表現したいという欲求が生じ、それにしたがい継続しますと、やがて文章による表現とは、単に、その場限りのアウト・プットではなくなり、思考を深めて、そして更なる継続を求めるような、ある種の機構・機関のようなものになっていきます。このようにして徐々に、読むこと、考えること、そして書くことが、それぞれ別々の営みではなく、連動して、知性を用いた活動として、創造的な表現になっていくのではないかと思われるのです。
 実際、当ブログ開始当初は、『日本文学史序説』からの引用記事を盛んに作成していました。しかしそれらは、単なる著作の紹介としてではなく、当著作の文章に触発されながら、そこに自らの経験や考えを重ね合わせたり、組み合わせたりすることにより、自らの考えを深めていこうとしていたのだと思われるのです。
 異言しますと、当ブログ初期での引用記事は、いまだ自らの言語としては定着していない考えや思想を表現出来るようになるための「足場」のようなものであり、さらに、それらを何度か繰り返し、組み直すことで、徐々に自分の文章表現での抽象的な意味での型のようなものが形成かれて行ったのではないかと思われます。
 振り返ってみますと、2013年の学位取得から2015年の当ブログ開始に至るまでの約2年間は、色々と動き回り、また葛藤故にか「空回り」ばかりしていたと自ら思うのですが、しかし、これは見方を変えてみますと、当ブログ開始に至るまでのいわば発酵期間であり、そして、私にとって、その発酵を促すものが、さきに述べた「自由な立ち読み的読書」からの精読であったのではないかと思われるのです。
 そのように考えてみますと、こうしたブログを含めた文章の作成とは、何やら何か特別な才能などにより成し遂げられるものではなく、むしろ、日常のなかでの、あまり意図しない選択や、あるいはまた逸脱のなかから、自然と生じてくる感覚を拾い続けることによって出来るようになるものであるのかもしれません…。
 そして、こうした経緯を多少意識的に振り返ってみますと、私はアウグストゥスが述べ、開高健が本邦に広めた「悠々として急げ」という言葉が思い起こされます。急いで結果を求めるのではなく、しかしまた、立ち止まらずに歩き続けていくことが、何であれ表現の本質に通じているのではないかと思われました。
そして、今回もまた、ここまでお読みいただき、どうもありがとうございます。

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ISBN978-4-263-46420-5

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