①『動物農場』では、寓話形式を用い、革命後の理想に向かうはずの社会が、どのようにして腐敗して独裁体制へと変質していくかを描いています。②『闇の奥』では、19世紀末のアフリカ大陸での列強による植民地支配下で、権力によって理性ある人間が堕落して、さらに、内心の倫理による制御を喪失した無軌道な権力のあらわれが描かれています。そして③『国家はなぜ衰退するのか』では、歴史・経済学を視座として古今東西の包括的制度と収奪的制度とを比較して、国家の盛衰のメカニズムについて考察しています。
これら三著作の相違は、まずアプローチの手法と云えます。①『動物農場』では、寓話的手法により、権力が腐敗する様相を描き、②『闇の奥』では、独特な文学的表現により、19世紀末の植民地支配の実態を描いています。そして③『国家はなぜ衰退するのか』では、学術的考察によって、制度が社会へ与える影響について帰納法的に論じています。とはいえ、いずれの著作も、権力の腐敗の様子をひとつの大きなテーマとしている点では共通していると云えます。
①『動物農場』では、平等を目指した動物達による革命が豚の「ナポレオン」によって独裁に変わってゆく様子を描き、制度が権力を制御できない場合、その権力は腐敗が避けられないことを示しています。
②『闇の奥』では、帝国主義的な植民地支配によって支配する側の人間の堕落した様子を描いています。作中で描かれている主要登場人物であるクルツの変化は、外的な社会制度としての倫理を失ったときに、どのようにして人間の内なる暴力性が発動しているかを描いています。
③『国家はなぜ衰退するのか』では、腐敗した権力の根源にあるものを制度的視点から検討します。収奪的制度の社会は権力者による富や資源の独占を助長し、社会全体を搾取する構造を形成します。この分析は、①『動物農場』や②『闇の奥』が描く世界観をある程度普遍的なものとして理解する枠組みを提供すると云えます。
また、これら三著作が示すことは、制度が人びとの行動や社会全体に与える影響についてです。①『動物農場』は、理想の実現には制度を監視し続ける必要があることを寓話的に伝え、②『闇の奥』は、植民地における支配の実践が、どのようにして人間を堕落させるかを文学的に描き、そして③『国家はなぜ衰退するのか』では、全般的な傾向として包摂的制度が国家・社会の繁栄を促進して、収奪的制度が同じく衰退をもたらすと述べています。
それ故、我々が生きる現代の社会においても、制度の設計はきわめて重要な課題であると云えます。そして、これら三著作は、それぞれが異なるアプローチに拠りつつ、我々人類の普遍的な問題に光を当て、そこから「制度の健全性」こそが、社会の持続可能性や発展においてきわめて重要な要素であることが認識させられます。
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