Bは「今そちらに向かっていて信号待ちだけれども、あと10分くらいでホテルに着くから、それじゃ。」と云い、それに私が返事をしようとすると既に通話は切れていた。ともあれ、そこから再度ホテルに戻り、フロントに一声かけてから隣接する駐車場に行き、Bの着くのを待っていると、駐車場スタッフの方に「何番に駐車ですか?」と訊ねられたため事情を説明すると「ああ、聞いてますよ。」と云いメモを見てから確認するように頷かれた。
陽はさしているとはいえ、この時季は動かないでいるとすぐに寒くなってくる。もう少し暖かい服装で来るべきであったかななどと思っていると、昨日見た白の軽バンが通りの向こうから見えてきた。私が少し通りに出てこちらに手招きすると、気が付いたようでスムーズにホテル駐車場の方に入って来た。そして駐車の後、整理券を受け取り、ホテルロビーを通ってT文館の方に向かった。
Bは「いやあ、思ったより早く着いたよ。それで、今日の昼は何を食べようか?」と聞いてきた。私は今朝、専門職大学に行って、ファーストフード店で少し重めの朝食を摂ったことを手短に伝えた。」すると、しばらく黙ってから「そうか、ええと、前こっちに来た時は、どこのラーメン屋さんで食べたの?」と重ねて聞いたきたため「ああ、Y形屋っていうデパートのすぐ近くにある、たしかTって云うお店だったかな。」と返事をすると、すぐに「ああ、あそこは老舗だね。じゃあ、そのすぐ近くにもう一軒Fっていうラーメン屋さんがあって、こっちも美味しいし、普通のラーメンなら、そこまで量も多くないから、そこにしようか?」と聞いてきた。
特に異論はないためすかさず同意すると「じゃ、そこに行こうか。」と云い、そのまま歩き続けた。そして、さきのお茶屋さんも過ぎ、さらに市電が曲がるところもそのままアーケードに沿って歩き、一つ目の電停とも接続している横断歩道を渡り、そこからさらに市電沿いに歩いていると、その横にはBが内定した銀行のかなり大きな支店か本店営業部らしい趣の建物があったため、歩きながら聞いてみると「ああ、本店ではないかれど、ここには営業統括部があるんだ。それと、近いうちにこちらに本店が移転するとも聞いているよ。」とのことであった。
やがてその建物を過ぎたすぐの角を右側に曲がりしばらく行くと、以前のラーメン屋さんとは感じが異なるが、これまた味のある佇まいのお店が見えて来た。開店後あまり時間は経っていないようだが、店内にはお客さんが少なからずいて、見たところ、こちらも地元客が多いように思われた。暖簾をくぐり店内に入りメニューを見てみると「ラーメン専門」と謳っているだけありラーメンと大盛とライスのみの構成であった。
Bと一緒にラーメンを注文すると、すぐに暖かいお茶と、かなりの量と云える大根の浅漬けが出て来た。この浅漬けの量はさすがに驚いたが、Bにそれを聞いたところ「まあ二人分だからね。」とのことであってが、これには私の質問の意図が上手く伝わっていないように感じられ少し歯がゆかった・・。やがてラーメンがやってきたが、その見た目はさきのTと似ているように感じられた。そして味の方も系統としては似ているが、こちらの方がスープが澄んではいるものの、その味にパンチがあり、少し脂が勝っているように感じられた。また全体的にはTと甲乙つけがたいくらいに美味しく、さらに大きな発見であったのは、同じ九州といっても、Kのラーメンは、北部の福岡や久留米や熊本のそれと比べ、スープが澄んで淡く、あまり強い「豚骨」感がないということであった。
これと近いものとして思いつくのは「沖縄そば」と云える。しかし、それとは麺が大きく異なり、共通する要素と云えるのは「澄んで淡泊な豚骨スープと」いったところであろうか・・。
また、そのようなことを考えていて、不図思い出したのは、以前に台湾からの留学生と都内町場にある中華料理店に行った時に漢族系本省人と云っていた彼が「日本の中華料理は美味しいけれども全部しょっぱい、塩辛いね。」と云っていたことである・・。考えてみると沖縄はKの先であり、さらに台湾は沖縄の先とも云えることから、それらには通底、共通する味覚に対する嗜好のようなものがあるのかもしれない・・。そして、さらには昨日Bが云っていた鳥刺しなどの生食文化についての見解とも関係があるのではないかと思われた・・。
こうしたことはBには云わず、黙って食べたが、あまりそればかりに傾き過ぎるのもどうかと思われるが、やはり、地域の食文化は大変面白いものであると感じられた。
*今回もまた、ここまで読んで頂き、どうもありがとうございます!
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