そうした中で、以前にも当ブログにて取り上げたジャレド・ダイアモンド編著による「歴史は実験できるのか」第一章の「ポリネシアの島々を文化実験する」にて以下の記述が記述が特に興味深く思われました。
p.43
「食料が豊富な年があると思えば、不足する年があるような予測不能な環境では、どの島でも各地の渓谷を支配する首長同士がたびたび対立し合うのも意外ではない。実際、異文化に接する直前のマルケサス諸島では襲撃や武力衝突が大きな特徴で、饗宴やカニバリズムの儀式のサイクルと密接に関わっていた。私は、べつの場所でこれを「競争的退行」と呼んでいる。」
p.45
「最初にトフア(*巨大な石造の祭壇(引用者))が建造されたのは拡張期だったと思われる。しかし、建築活動が最もさかんだったのはサッグスが古典期と呼んだ時期だと考えて間違いない。ヨーロッパ人と接触するよりも1、2世紀以前から、接触が始まった頃までに当たる。この時期は、「競争的退行」のパターンの進行が民族誌学的に証明されている時期でもあり、襲撃が絶えず、饗宴の規模は拡大し、人身御供への注目が高まった。そのうえ、人口密度が最も高くなり、定期的に発生する干ばつや飢饉の影響がマルケサス諸島全域におよび、社会政治的制度が大きく変容を遂げたとも推定される。古代ポリネシアのパターンから離れ、トーマスが「流動的かつ競争的な」社会制度と呼んだ形へと変わっていったのである。」
干ばつや飢饉、そして、そこから生じる既存統治体制の揺らぎは、原初的な祭政一致の社会では、祭祀・儀式への依存・注力が一層強まり、そして、祭祀を同じくする個々の社会集団における凝集性はさらに強まり、反面で、異なる社会集団同士の争いは激化し、また同時に、そうした状況(干ばつ・飢饉・争乱)によって農作物などの拡大再生産は為しえなくなると、さらなる争乱の激化につながっていき、そうした一連の状態を当著作では「競争的退行」と呼んでいると思われますが、このコトバをネットで調べてみたところ、未だ一般的には運用されていないと思われましたが、同時にこのコトバは、この時代(西暦1400年~1600年頃)のマルケサス諸島社会のみにふさわしいといわけではなく、たとえば西暦1500年代前後のユカタン半島のマヤ文明、あるいは、2世紀後半の所謂「倭国大乱」の時代にも、あるいはこれと類似した現象があり、さらには、経済的には継続的な停滞期にある一方、情報技術が更に進化発展し、他方では感染症に社会全体が脅かされている我が国社会においても、こうした「競争的退行」とも認識出来るような状況が多く生じているのではないかと思われました・・。
(記載部分のマヤ文明につきまして、興味がありましたらメル・ギブソン監督の映画作品「アポカリプト」をご覧ください。あるいはジョルジュ・バタイユ著の「呪われた部分 有用性の限界」(ちくま学芸文庫)をご一読ください。)
とはいえ、このコトバが記載された著作「歴史は実験できるのか」は、未だ原書を入手しておらず、どのような英語表記になっているか分かりませんので、現段階では何とも云えませんが、この「競争的退行」というコトバは、昨今の我が国社会の状況、あるいはまた、世界規模でのある種の状況を指すものとして、適切であるようにも思われましたが、さて、如何でしょうか?
慶應義塾大学出版会株式会社刊 ジャレド・ダイアモンド ジェイムズ・A・ロビンソン編著 小坂 恵理訳 「歴史は実験できるのか」
ISBN-10: 4766425197
新型コロナウィルス感染症そして東アジアを含めた世界情勢が出来れば今後、収束そして鎮静化することを願っています・・。
*今回もまた、ここまで読んで頂き、どうもありがとうございます!
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祝新版発行決定!
ISBN978-4-263-46420-5
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