大学設置以前からの歯科医師会立専門学校歯科技工士科の先生方は、既にその当時定年間近であり、また、K大学の歯科生体材料学研究室の先生方も、その設置にあたってはS教授によく協力されたとのことであったが、新設の医専大での講義や実習については、さきの専門学校の先生方と同様「体力的に少しキビしいです。」とのことであり、また、それに対しS教授も設置の際に色々と働いてくれた研究室の先生方に対して無理強いしようとはしなかった。その代わりに、当時、他の補綴系研究室から大学院生として歯科生体材料学研究室にいわば出向していたH先生と、もう一人のM先生に白羽の矢が立ち、彼等は大学院生でありながら、医専大の教員として勤務することになった。
そして数年を経て、E先生が専任教員として着任するまでは、H・Mの両先生を主としながらも、K大学と、かつての専門学校歯科技工学科の先生方からの手助けにより、どうにか口腔保健工学科の実習・講義をまわしていたとのことであったが、そこからさらに数年経ち、私が入学した頃にはH、M、Eの若手3先生によって、学科をまわしている状態にはなっていた。
H、Eの両先生については、以前にも触れたため、ここではM先生について述べる。このM先生は地元のご出身であり、一度、他の歯学部に入学され、3年次までは進級したものの、ご家族の都合のため実家に戻る必要が生じ、そして、あらためてK大学の歯学部を受験されたとのことであった。その見た目は、以前にも少し触れたが、恰幅が良く、目が大きく、Kをはじめとする九州南部地域で時折見受けられるタイプであり、性格は全体的に朴訥としながらも、実習などで見せる、さまざまな手捌きは繊細なものがあり、私にとってこのコントラストは少し驚きであったが、案外、こうした朴訥な外見の方々の方が良いセンスを持っているのかもしれない・・。
さて、私がはじめて実習補助の非常勤講師として医専大の口腔保健工学科教員室(研究室)に入った時、M先生は弁当を食べており、H先生は何やら書類を片手にマグカップのコーヒーを飲んでいた。また、E先生は実習準備のために実習準備室(倉庫)と実習室を行き来しているとのことであった。
M先生は「もう大体準備は出来ているから、それと今年の2年生(この実習は2年次に受ける)は**君の頃から少し増えて20名だけれど、また女子学生が少し増えたね・・。昔は歯科技工士は男性の仕事というイメージだったけれど、これからは変わっていくんだろうね・・まあ、それは歯科医師でも同じかもしれないけれど・・。」と仰っていたが、たしかにそれは少なくとも間違いではないように思われた。そして、実習準備をされているE先生の手伝いをしようと両先生にその旨を申し出ると「ああ、それは丁度良い、E先生はインレー・ワックスを金型に圧接する時のプレス機を準備していると思うから、そちらに行って手伝ってあげてください。」とのことであった。
そこで、足早に実習準備室へ行ってみると、果たしてE先生はプレス機をカートに載せて、さらに大瓶に入ったワックス分離剤(セップ)を棚から取り出しているところであった。そして私の姿を入口に認めると「あ、丁度良かった、この棚にあるワックス・インスツルメンツの箱を実習室に持って行って所定の場所に置き(分かるでしょ)、戻ってきて一緒に、このカートを実習室まで運ぼう。」とのことであった。
実習室にインスツルメンツが収納された箱を持って入ると、薄青色の作業着、制服を着用した学生さんが既に何人かおり、古びた同じ制服を着用している私を見ると、しばし動きが止まったが、首に吊り下げた「非常勤講師」のカードを認めたのか「こんにちわ」と声を掛けてきて、少し訝し気な様子にて、浅くお辞儀をした。それに対し私は多少、威儀を正して応答しようと思ったものの、K大学にいる時の癖であるのか、どうもそれが出来ずに「ああ、どうも、こんにちは・・今日はよろしくお願いします。」といった返事をしていた・・。
そうした態度と、着用している作業着、制服から、一人の学生さんが「あの、先生はここの卒業生なのですか?」と続けて訊ねてきた。私はすぐにまた実習準備室に戻る必要があることから「ええ、そうですけれど・・今ちょっと実習の準備していますので、また後で・・。」と云って片手を少し上げ実習室を後にした。
今回もまた、ここまで読んで頂き、どうもありがとうございます!
日本赤十字看護大学 さいたま看護学部
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ISBN978-4-263-46420-5
*鶴木クリニックでのオペ見学につきましても承ります。
連絡先につきましては以下の通りとなっています。
メールアドレス: clinic@tsuruki.org
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