2024年12月9日月曜日

20241208 「文明開化の光と影:日本社会の発展と文化的アイデンティティ」開戦の日に寄せて

 明治維新による西洋近代化の影響は、現代の我が国の社会に深く根付いていると云えるが、我々の多くは、この影響の元である明治以降の西洋近代化について、あまり多くは理解していないのが現状と云える。そこから、現代の我が国社会にも影響を与えている西洋近代化、即ち「文明開化」について考え、その本質を理解することは、今後の社会を考えるうえで重要であると考える。

 「文明開化」を考えるに際しては、ある程度、明瞭な定義を付与するのが適切と云える。しかしながら、定義があまりにも厳密であると、現実での変化に定義の方が対応し難くなり、たとえば、円を「中心から円周上の任意の点までの距離が等しい図形」と定義しても、現実世界の円とは常に完璧な形状ではない。そこから、定義に対する柔軟性の重要さは、我々の活力の発現の仕方にも通じるものがあり、時には活力が節約され、あるいはまた別の時には、好んで消費されるといった様相をがあると云える。

 このことをもう少し述べると、活力には、効率を求めエネルギーを節約する性質と、楽しみや快楽を追求して積極的に消耗するといった性質がある。そして、これらの性質が相互に作用し合い、競争が激化したり、生活が複雑化してきたが、概して、我々の社会は進化発展を遂げてきたと云い得る。

 我が国の文明開化とは、19世紀当時の西欧列強からの圧力による外発的な社会変化の典型例であると云える。そして、急激な外圧による影響を受ける過程で、我が国の社会は、それまで自然に行ってきた自らの国・地域の文化伝統を十分に時間を掛けて吸収するだけの余裕を失い、さらに続く西洋からの影響を受容するために、以前からの文化伝統をも放棄せざるを得ない場面が多くなり、そのたびに不安や虚無感を覚え、やがて、ものごとを深くから理解しようとする内発性が徐々に削がれていった。

 そして、我が国で文明開化が進行するほど、我々の生活は競争が激化して、困難を伴うものとなり、他方で幸福度はあまり向上せずに矛盾した様相を示すようになった。そこから、この「文明開化」は一見すると、その後の我々の社会に便利さや繁栄をもたらしたとは云えるが、その反面で、急速な変化への適応によって内的葛藤を強いている。競争が激化し、生活が複雑化する一方で、生存に対する不安や努力の本質といったものは、時代を超えて変わらない点は注目すべきことである。

 こうした状況下で、我が国の文明開化では「外発的な刺激による急速な変化」を特徴とする一方で、内発的な変化に伴う自然な感覚や、その持続性を欠いていたことから、我々は常に文化的な変化のさなかに自らのアイデンティティ(自己同一性)を模索し続けなければならなかった。こうした外発的な変化が与える心理的負担は、現代においてもなお継続しており、それが我が国国民多くの抱える精神的な困難の根源であると考える。

 文明開化により形成され、現在までも続く我が国の社会は、西洋技術による効率化などの恩恵を享受しながらも、文化的アイデンティティ(自己同一性)の喪失などに不安や戸惑いを覚えている。これらを踏まえると、さきの文開化を再評価して、社会が持続可能な発展を実現するためには、一方的に外部からの影響を受容するだけではなく、内発的な文化の成熟を育む努力が必要であるのではないかと考える。

そして最後に、今回もまた、ここまで読んで頂きどうもありがとうございます!
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