2021年10月14日木曜日

20211013 既投稿記事をいくつかまとめたもの⑩

おかげさまで一昨日投稿の記事は、投稿後二日としては、思いのほか多くの方々に読んで頂くことができました。当記事を読んでくださった皆様、どうもありがとうございます。また、そこから考えますと、私の作成記事の多くは、西南日本に在住していた期間の記憶に基づいて作成されたものであると云えますが、とりわけ、和歌山での記憶は、私にとって初めての西南日本での在住経験であったことから、鮮烈に覚えているものが多く、それは日常生活の中で、何かしらの違和感を感じるようなことから、意識が惹起され、そして記憶されるといった流れがあったように思われます。

たとえば、現地の方々が日常的に使っている道具から、それが意識されることがありましたが、そのような道具のなかで、強く印象に残っているのが、当地特有の形状をした「紀州鉈」と呼ばれるものであり、私が南紀白浜に住み数カ月経ち、本格的な観光シーズンに入る前に、勤務ホテル近辺の白良浜の掃除を私を含む何人かの従業員で行っていた際、同時に、おそらくは町から依頼を受けた植木屋さんであると思われますが、本職らしい方々がいらっしゃいましたが、彼等が手にしていたのが、当時の私としては奇妙なほどに柄が長いと感じられ、鉈とも槍とも云えるような刃物(紀州鉈)であり、後になって知りましたが、この形状および類似する形状の鉈は、西南日本を主とした西日本一帯にて広く用いられているとのことでした。

しかし、当時の私は、地下足袋に脚絆を巻き、作業ズボンをはき、赤黒く日焼けされた方々が使い込まれたと思しき紀州鉈を各々手に持ちつつ雑談をされている様子を見て、何と云いますか、過去の時代にタイムスリップをしたような感じを受けました。たしかに、現在においては、昼間の屋外で、大きな刃物を持たれた方々が雑談している光景を見ることは極めて少ないと思われますので、その感覚は現在においても、特におかしいとは思われません・・。

こうして、自分の中で違和感、疑問が生じ、その後、機会を見つけて、この「鉈」についての情報を仕入れ、そして、さらに、その背景を徐々に理解していくわけですが、この時(2001年)受けた違和感は、数年後の修士課程院生の頃に某冊子に記事となって載りました。残念ながら、その記事のデータは現存しませんが、そのなかでゲオルグ・ジンメルによる記述を援用し、紀州鉈の特徴について述べていましたが、あの当時もまた多少奮っていて、おかしくなっていたのかもしれません・・(苦笑)。

ともあれ、この特徴的と云える紀州鉈の形状は、大きくはヒツ鉈と分類され、「ヒツ」と呼ばれる、刃に対してオフセットに取り付けられたソケット部位に木柄を差し込み、鉈として用いるわけですが、この形状の鉈は、関東をはじめ東日本ではあまり見受けることは少なく、その多くは、西日本、とりわけ西南日本にて多く見られます。

また、我が国の武器として、これに近いものは、平安時代から室町期を通じて北部九州地域にて主に用いられた「筑紫薙刀」と呼ばれるものであり、この武器も刃部に対してオフセットになっているソケット部(ヒツ)に木柄を差し込む構造となっています。

くわえて、紀州鉈と類似した形状のヒツ鉈は、現在の九州地域においても広く見られ、あるいは殆ど同じとも見受けられるものもありますが、こうした事情の背景には、古くから、樹々の伐採など林業に従事する方々は、木の国たる紀州和歌山と、樹々が良く育つ日向の国の宮崎や、同様に多くの森林を擁する土佐の国、高知を往来していたと聞き及んでいたことから、その過程にて、山林業や伐採などに用いられる、こうした道具も自然に伝播していったのではないかと思われます。

そしてまた、そうした交流ルートが古くから存在したからこそ、それに乗り、すぐれた漁法や、醤油・鰹節の製造法や、火縄銃などの武器が列島各地に齎されていったのだと云えますが、同時に各地には、微妙な相違がある、それぞれの気候風土の中で育んできた文化から生じる「好み」のようなものがあり、それに適応・適合しつつ、局地的な展開(発展)を遂げて行ったのだと思われますが、そうしますと、ここで不図、何故か「ガラパゴス化」というコトバが思い出されてきました・・。

ともあれ、このあたりでまた、さきの投稿記事にて述べました、乳酸発酵による酸味や柑橘による酸味を嗜好する文化と、これまでに述べた「ヒツ鉈」の文化に親和性があり、それを接合出来るのではないかと思われてきましたが、それにつきましては、また別の記事にて述べさせて頂きたいと思います。

今回もまた、ここまで読んで頂き、どうもありがとうございます。

順天堂大学保健医療学部


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