2017年12月15日金曜日

20171215 ロストワックス鋳造法・鋳造収縮などについて

歯科医療において多く用いられる鋳造方法はロストワックス法と呼ばれるものであり、これは鋳造体原型模型をワックス等の成形・加工が容易な樹脂系材料を用いて作成し、これを耐火性質を持つ鋳型材(埋没材)内部に包埋し、乾燥した後、包埋された樹脂による鋳造体原型模型を炉内にて熱して焼去、焼き飛ばし、それにより生じた空隙部に溶湯状態の合金を鋳込むことにより樹脂製鋳造体模型が合金による鋳造体に置き換わるといった手法である。

このロストワックス鋳造法とは歯科医療のような精密な寸法精度が要求される鋳造体の作成に適した手法であり、その歯科医療への応用の公的な起源は20世紀初頭(1907年)米国の歯科医師タガートによるニューヨーク市での歯科医学会における講演であるとされている。

とはいえ、ロストワックス鋳造法自体は歯科医療以外の分野においては相当古くから用いられた手法でもあり、我が国においては奈良時代に朝鮮半島・大陸よりもたらされたと考えられており、この手法により当時の仏像、銅鏡などが多く制作されている。【当時のワックスとは蜜蝋であった。】

さて、歯科医療における鋳造とは一般的な工業界における鋳造とは異なり金・銀・銅の三元合金さらに高カラット合金を早くから多用していたことから、当初は得られた鋳造体の化学的・機械的性質については合金そのものが優れていたことからあまり問題とされなかった。

しかし、この鋳造法にてインレーを作製する場合においては、その窩洞への適合性に対してはかなり厳しく、その精度についての議論とはかなり鋭いものであった。

鋳造体の精度について、はじめてその理論を公表したのは米国の国立標準技術研究所のコールマンでありコールマンは合金の鋳造収縮に着目し、それが鋳造体が不適合となる要因であると述べた。

当時(1928年)この鋳造収縮の理論とは画期的なものでありコールマンはそのなかで純金の鋳造収縮を約1.25%であると発表していた。

後年、我が国の歯科理工学研究者の始祖の一人とされる金竹哲也が公表した値は1.7%であり、現在においてはこの値が妥当とされている。

ともあれ、この鋳造時に生じる収縮を何らかの方法により克服することが出来なければ、鋳造精度の向上ひいては精密な歯科補綴物の製作は為し得ない。

他方、1913年にフェンナーにより石英の高温結晶であるクリストバライトの熱膨張の性質が解明された。

そこで歯科界はこのクリストバライトの熱膨張の性質を鋳造に用いる鋳型材(埋没材)として利用し、さきに述べた合金の鋳造収縮を補う・相殺することを試みた。

今回もここまで読んで頂きどうもありがとうございます。

昨年より現在に至るまで列島各地にて発生した一連の地震・大雨・水害等の大規模自然災害によって被災された
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