2018年5月24日木曜日

20180524 人文社会科学系学問の価値について (インターネットおよび端末機器の普及から)

本質的には自然科学系であろうと人文社会科学系であろうと各学問領域間には上下関係、ヒエラルキーはないと云えます。しかし一方、世間一般においては、こうしたものは厳然と存在し、現在であれば医学部医学科がこのヒエラルキーの頂点にあると云えます。

また、そうした状況から波及してか、近年においては特に医療領域学部・学科の人気も高まり、これが以前に述べた今世紀以降顕著になった四年制看護学部・学科の新設・増設の背景にある潮流と云えます。

その一方で、もう一つ顕著なことは、人文社会科学系領域の衰退であり、無論、その背景には現在進行中の少子化もありますが、それと同時に特に実学的要素が少ないとされる思想・哲学、文学、歴史などといった原理的な人文社会科学系領域の衰退とは、おそらく今後数年の後、何らかのカタチでツケが来ることが予測されます。

とはいえ、近年のインターネットの普及、端末機器の進化発展により、以前と比べ、我々は膨大な知識・情報量を即座に検索し知ることが出来るようになりました。この一連の出来事は15世紀欧州における活版印刷技術の発明にひけを取らないものであると云え、おそらく、こうした環境の形成が為されていなければ、現今我々が関心を寄せている、さまざまな社会での出来事に対しあまり関心を持つこともなく、またそれだけに、社会はある意味において平穏であり続けたのではないかと思われます・・。

このように即座に運用可能な知識・情報量が膨大なものとなれば、精神もしくは頭脳に知識・情報をインプット(内在化)する作業としての学習に価値を見出すことが困難になるのかもしれませんが、人文社会科学系学問の価値の神髄は、おそらく運用可能な内在化された知識・情報量を増やし、社会的有用性の高い人間を育成することだけではなく、知識・情報のインプット・アウトプットを能動的に継続して行うことが出来る人間を育成することが主であると考え、本来動物でもある我々人間は、この過程によってのみ、より不可逆性の強い進化(変化)をすることが出来るのではないかと考えるのです・・。

あるいはこのことを言い換えますと、インターネット検索により簡便に知り得た知識・情報は、おそらくその後の定着率が低く、もしくは精神に埋入される深さが浅いことから、その後の活動に寄与・関与することは乏しく、他方、能動的に知識・情報のインプット・アウトプットを継続していますと、そこで知り得た知識・情報はより精神の深いところに埋入され、そして同時にその後の持続可能性もまた担保され得るのではないかと思われるのですが、さて如何でしょう・・? 

そのように考えてみますと、将来安定して貨幣を得やすい学問領域に人が集中するのは仕方がないことであるのかもしれませんが、一方で社会全体がそうした考え方を肯定するようになってしまいますと、その後の社会全体の劣化が著しくなり、持続可能性や創造性もまた損なわれていくように思われるのです・・(あるいは現在がまさしく、そうした時代であるのかもしれません・・。)。

そしてまた、こうしたことを考える際に有効と思われるものは頭脳・精神に定着、深く埋入され、さらに血肉化し、自在に用いて考えることが出来るにまで至った思想・哲学、文学、歴史などの知識・情報であると考えます(これはおそらく付け焼刃は出来ません、自然科学系のそれと同様に・・)。

今回もまた、ここまで読んで頂き、どうもありがとうございます。

数年前から現在に至るまで日本列島において発生した、現在も継続している大規模自然災害によって被害を被った、諸地域のインフラの回復、その後の復興を祈念します。


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